なぜ月ノ美兎は面白いのか ―「オモシロ」の密度―
日々の生活にかまけていたら1年以上も記事を書いていなかったことに気づきました、どうも筆者です。
近頃はアニメを観るのもVtuberの配信を追うのも疲れるようになってきてしまいました。
これが老化でしょうか?まだ26歳なのですが…
いや、もう26歳?
あれ?今年でアラサー?
しかし私がこうやってショゲているのとは関係なく、Vtuberたちは毎日のように面白い配信を届けてくれています。
流行りのゲームやミームも彼/彼女たちを追いかけていれば何となく把握することが出来ます。
インドア派の田舎者である私にとっては、もはや世間に置いていかれないライフラインのひとつと言っても過言では無いでしょう。
そのVtuberの中でも、私が特に尊敬してやまないのが「委員長」こと「月ノ美兎」さんです。(以降委員長と呼称)
もはや「Vtuber」の歴史を語る上で絶対に外すことの出来ないレジェンド。
にじさんじのアイコン的存在であり、登録者数は2024年6月現在で121万人と、今もファンを増やし続けています。
そんな彼女を私が尊敬している理由は「不変的な面白さ」です。
どんな活動者・表現者にも成長曲線というものは存在します。
質の高いコンテンツを提供し続けていても、ふとした拍子に衰退期や停滞期に陥ることも少なくありません。
しかし、委員長は(あくまで私の主観ではありますが)活動初期から今に至るまで「面白さ」が全く衰えていないのです。
なぜ、委員長の配信や動画を見ると「面白い」と感じるのでしょうか。
そもそも「オモシロ」とは?
そもそも「面白い」とは何でしょうか?
これは様々なニュアンスを内包した形容詞です。
ネット辞書にはこのように定義されていました。
1 興味をそそられて、心が引かれるさま。興味深い。
2 つい笑いたくなるさま。こっけいだ。
3 心が晴れ晴れするさま。快く楽しい。
4 一風変わっている。普通と違っていてめずらしい。
5 思ったとおりである。好ましい。
6 風流だ。趣が深い。
面白い(おもしろい)とは? 意味・読み方・使い方をわかりやすく解説 - goo国語辞書
このように、一言に「面白い」と言っても非常に沢山の意味があることがわかります。
単に「笑える(funny)」だけでなく、「興味深い(interest)」、「珍しい(rare)」といった感情も含まれているのです。
委員長は、このような様々な種類の「オモシロ」を配信や動画で提供し続けてくれています。
1例として、2022年11月24日から今年に至るまで継続して配信されている「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」のゲーム実況シリーズを挙げてみましょう。
このシリーズはゲームスキルや攻略よりも、委員長のストーリー・キャラに対するリアクションやトンチキ発言を楽しむタイプの実況であり、ゲームへの予備知識などはあまり必要とされません。
かくいう私もポケモンはしばらくプレイしておらずタイプ相性も忘れていましたが、ラジオ感覚で楽しむことが出来ています。
このシリーズで顕著に現れているのが、委員長が見せる「オモシロ」の「密度」です。
まずはこちらのアーカイブをご覧ください。(ニンダイ)
ここでは主人公が通う学校「オレンジアカデミー」の講師について、委員長と視聴者がバトルを繰り広げています。
主な発言をタイムスタンプと共に書き起こしてみたいと思います。
3:03:40 (視聴者からのタレコミを見て家庭科を選択)「ちょっとあの先生がエッチらしいんで」
3:03:49 (筋肉ムキムキの先生が出現)「……」
3:03:51 「さて、ということでね、本日の実況はこれにておしまいにします。そんで…えっと引退するか」
3:04:30 「また騙されたブイねぇ…」「お前らさぁ…ほんと画面越しじゃなかったらブン殴りに行きたかったんですけどw」
書き起こしてみると、およそ1分の間に4回も笑えるポイントが存在していることがわかります。
BPMならぬOPM(オモシロ・パー・ミニッツ)を算出すると「4 」となります。
「先生がエッチ」というタレコミを安易に信じるマヌケさ
マッチョ先生を見た時の絶句
「リスナーに騙されたので引退する」というキレ方、およびその反応の早さ
「画面越しじゃなかったら殴ってる」という配信者プロレスのお手本のような罵倒
このように、笑いのポイントを逃さずにラッシュのように短時間で叩き込んでくるので、視聴者の満足感は必然的に高くなります。
また、下ネタや自虐・絶望など、数種類の笑いを提供することにも成功しています。
また別の場面を見てみましょう。
ラップを得意とするジムリーダー・ライムと対面した際の一幕です。
2:22:25 (「ライムタイム」なるLIVEの時間がある事に対して)「スーパーみとみとタイムは無いんですか!(意味不明)」
2:22:41 「引き立て役か?挑戦者様ぞ?わたくしェ(イキリ)」
2:22:54 「♪そういうの良くないなぁ…今ラップになってた?」
2:23:18 「(コメントを読む)美兎は6タテ♪ここでは引き立て♪」「……ブロック。」
2:23:25 「コメントはブロック♪私は前座ブロック♪…www」
2:23:55 「(NPCのラップに対して)ちょっとショボイな…なんか」
2:24:03 (ズンズンチャッチャカ……という擬音に対してバカウケ)
2:24:10 「擬音のチョイスだっさww」
2:24:44 「やっぱ版権モノとかどんどん侵してかないとラップっぽくないからさ(ド偏見)」「ライムも何か言ってよ、まるでミッキーマウス!みたいなさ」
2:25:39 (骨ある挑戦者は居ないかと嘆くライムに対して)「わたくしですよわたくし!ジョージョーユージョーガテマテサイキョー!ズチャチャズチャチャ!ナナナナナ!」
この一連のシーンの笑いのポイントとしては、
クソ雑魚ラップ初心者のくせにすぐイキったり上から目線になる
コメントで上手いこと言われてブチギレ
ついにライムと対面するも、ラップとして披露した歌詞は「ヒャダインのじょーじょーゆーじょー」の丸パクリ
などが挙げられます。
委員長はゲーム配信などでは「すぐイキるが、基本はクソ雑魚」というキャラで一貫しています。
「勝ち」と「負け」をテンポよく自在に展開するさまは見ていて飽きず、心地良さすら感じます。
ずっと勝ち続けていたり、逆にやり込められ続けていては面白くありません。
どちらの面も見えるから楽しいのです。
委員長はこれを殆ど無意識に行っており、彼女の配信者としての才能、センスの良さが分かります。
また、さらに注目すべきポイントとしては、「ズンズンチャッチャカ…という擬音へのツッコミ」が挙げられます。
確かにこの擬音はラップミュージックを表現するにはあまりにも陳腐すぎ、逆にdisっている範疇に入るのでは?と思ってしまいます。
委員長は、このような「多くの視聴者が抱いたであろう感想」を的確に言葉にしてくれるのです。
このように配信者と感性がリンクすると、視聴者には一種の快感とともに「面白い」という気持ちが生まれます。
委員長はボケキャラに振れがちですが、ツッコミ適性もちゃんとあります。
そして「おバカキャラ」というわけでもないので、場面に応じて様々な表情を見せられる強みがあると言えます。
また、委員長は「あらかじめ仕込んでおいた笑い」を提供することも得意です。
こちらの配信の冒頭を見てみましょう。
この配信のサムネイル(蓋絵)は「ハーフツインの委員長がウインクしながらギャルピースをしている」というものです。
とてもキュートであり、視聴者の関心を惹きやすいサムネと言えるでしょう。
しかし配信が始まった時、映し出された委員長の姿は……。
……謎の髭面の男が融合したバケモノでした。
ちなみにこの男は、以前の配信で「委員長の元カレ」として生み出されて以降、何かと虐待されたり酷い目に会いがちな「ロング・カントラケッティ」くんです。
また、委員長が発した「愛し合う2人はいつも一緒」とは1995年に発売されたゲームソフト「リンダキューブ」に出てくるセリフで、この不気味な格好の元ネタにもなっています。
詳細はググれば出てくるのですが…知らない方は自己責任でお願いします。
配信の趣旨としては「雑談をしつつ視聴者から提供されたアクセサリーを紹介する」というものでしたが、可愛いサムネで釣っておいて開口一番このネタをやるあたり、さすが委員長と言えます。
しかも選ぶネタがマニアックで古いあたり、「サブカルクソ雑魚委員長」の冠は伊達ではありません。
生配信はカットやテロップなどが使えないため、動画と比べてコンテンツの「密度」は低くなってしまう傾向があります。
しかし委員長は、事前に仕込んだり要所で畳み掛けることでこの「密度感」を維持しており、それが「面白さ」に直結しているのです。
他にも面白い場面が無数にありますので、まだ委員長の配信や動画に触れていない人はぜひチャンネルを覗いてみることをオススメします。
また非公式ではありますがファンメイドの優れた切り抜きチャンネルも存在します。
時間が無いという方はこちらもオススメです。
※筆者とこのチャンネルはなんの関係もありません(念の為)