頭の中の小さな引き出し

思ったことを書きます。たぶんほとんど更新しません。

#ぽんぽこ24 「POSUKE」企画から考える、エンタメ成立の難しさ

お久しぶりです。

前回の記事からもう2ヶ月…。

時の流れは早いですね。

さる5/7~5/8、「ぽんぽこ24 Vol.6」が開催されました。

「フューチャー」をテーマに、今回も豪華ゲストを迎えつつ、ぽこピー史上初の試みとなるスタジオからの生放送が行われました。

企画は大成功のうちに終了し、筆者も(徹夜と出勤でヘロヘロになりつつ)とても楽しむことが出来ました。

今回のぽんぽこ24でも趣向を凝らした様々な企画が準備されていたのですが、その中でも個人的に興味深かったのが「POSUKE」という企画でした。

企画の面白さ以外にも色々と考えさせられることがあり、この記事を書くことにしました。

「POSUKE」とは?

この「POSUKE」という企画は、任天堂製のゲームソフト「スーパーマリオメーカー2」で作られたコースに参加者たちが挑戦し、各々がクリアを目指すというエンタメ番組です。

TBS系列で放送されているスポーツエンタメ番組「SASUKE」のパロディ企画でもあります。

ぽこピーにしては珍しいゲーム系の企画で、チャンネル登録者数300万人超えのゲーム実況者「ポッキー」氏などが参加する事でも注目されていました。

課題となるコース制作の監修は、マリオメーカーシリーズを6000時間以上プレイし、世界最難関とも言われるコース「Daphne's finale」を投稿した「solea」氏が務めました。

参加者たちにはそれぞれ1週間の練習期間が与えられ、事前に準備しつつ本番に臨んだわけですが、ここで思わぬ事態が発生します。

コースが難しすぎて脱落者が続出したのです。

トップバッターの「鬼灯わらべ」さんは、スタート直後にミスをしてしまい悔しさで号泣。

急遽再走を含めた2回勝負にルールが変更されましたが、またもやスタート直後にドボン。

▲鬼灯わらべさんは本来は実力のある人です

「葉加瀬冬雪」さんと「ポッキー」さんも苦手なポイントでミスをしてしまい、どちらもゴール出来ず。

▲何故か画面共有が上手くいかず画面直撮りのポッキーさん。黎明期のニコニコ動画??

「のばまん」氏はクリア直前まで進みましたが、こちらも惜しくもクリアならず。

事前準備があったとはいえ、本番にかかるプレッシャーは別。

しかも2万人以上の視聴者の目線に晒されていたわけですから、参加者の緊張は推して知るべしでしょう。

雲行きが次第に怪しくなり、コメント欄の視聴者も諦めムードが濃くなってきた頃、ついにラストの挑戦者、ホロスターズ所属「影山シエン」さんに順番が回ってきます。

企画者であるぽこピー2人や解説に駆けつけたsoleaさん、そして視聴者の全てが「クリアしてくれ…!」と祈る中、シエンさんは何度も危険な状態になりながらも、2走目でついにコースクリアします。

ハラハラして手に汗握りつつ見ていた私も、シエンさんがゴールした時は思わず「すげえ!」と声を出してしまいました。

それまでの挑戦者が全て脱落し「クリアは無理なのでは」という雰囲気が漂っていた中で、最後の挑戦者がギリギリでクリアする展開は、エンタメとしてまさに理想的。

後から振り返るとむしろ出来すぎとも思えるほどでした。

シエンさんの超ファインプレー

シエンさんのコースクリアは、単にクリアしたというだけでなく、POSUKEという企画全体を救う超ファインプレーでもありました。

もし誰もコースクリア出来なければ、「まぁ…難しいからしょうがないよね…」という、何とも残念な空気が参加者と視聴者の間に広がってしまったことでしょう。

企画者であるぽこピーの2人もダメージを受けたはずです。

また、(本人も危惧していましたが)コース製作者であるsolea氏にも「難易度が高すぎるんだよ!」というクレームが寄せられていたかもしれません。

POSUKEは今回のぽんぽこ24でもかなり前半の企画だったので、ここで躓くと後の企画に尾を引いてしまっていた可能性もあります。

まさしく「エンターテイメントの危機」でした。

このように、シエンさんのファインプレーは色々なものを救ったのです。

今回のぽんぽこ24において、非常に重要なポイントだったと言えます。

しかし。

私はこの企画が終わった時、あるVtuberの事を思い出していました。

高難易度のゲーム…。

おいおい、誰かを忘れてるんじゃないか?と。

This is コモラ

そう、ぽこピー界隈で「高難易度ゲーム」と言えばコモラさん以外にいません。

(誰?と思われた人はこちらの記事も参照してください。)

ぽこピーの2人もそれは理解していたようで、POSUKE企画とは別の枠でコモラさんを呼び、同じコースをプレイするように依頼していました。

コモラさんは朝のフリー枠に颯爽と現れると、いつもの如くイキり散らしながらコースをプレイ。

▲コモラさん登場は2:19:20頃から

ぽんぽこさんと雑談を交わす余裕を見せながら最終ステージまで辿り着き、一発勝負でクリアしてみせました。

アクロバティックなショートカットを連発し、最後にはコースの欠陥ポイントを指摘することさえしたのです。

ぽんぽこさんの「10回中何回クリアできますか?」という質問には「10回中9回」。

ピーナッツくんに「緊張してるじゃん」と言われると「緊張してるよ。だって10回に1回はミスるから(笑)」。

か、かっけぇ…!!

まさにリアルなろう系…!

連載でこんなキャラ出てきたらコメ欄で叩かれるぞ…!

コモラさんの圧倒的なゲームスキルとイキりをこれでもかと見せつけられた一幕でした。

しかし、私は感動しつつもなんとなくもどかしい気持ちを抱えていました。

「コモラさんがPOSUKEに出ていれば、彼のスキルをたくさんの人に見てもらえたのに…」

と。

私はコモラさんのファン(所謂"コモラー")なので、推しであるコモラさんがたくさんの人の快哉を浴びる場面をどうしても妄想してしまうわけです。

あのコースの難易度の高さが最も強調されていたタイミングでコモラさんがクリアしていたら、彼のファンがもっと増えたのではないか、と思ってしまったのです。

しかし、もう少し落ち着いてからさらに考えていくと、そんなに物事は単純ではないという事に気が付きました。

何をやったか、誰がやったか

コモラさんは今回の企画へ向けて練習する中で、このような発言をしていました。

「このメンツにね、コモラさん混じってしまったらね…」

「逆にね、僕が企画に呼ばれて、あっさり一発目にクリアしても盛り下がるからね。こいつぽこピーの身内やろみたいな。」

▲練習動画で語るコモラさん

そう。

コモラさんは分かっていたのです。

POSUKEという企画がエンタメとして成立するには、「ゲームスキル」と「知名度」の両方が必要だということを…。

POSUKEに参加していた配信者さん達はファンが多い人ばかりでした。

チャンネル登録者で見ると、ポッキーさんが最多の322万人。

1番少ない鬼灯わらべさんでも15.1万人と、全員が10万単位のファンを抱えています。

対してコモラさんは1.73万人。

私は数字が全てではないと思っていますが、やはり知名度で見ればコモラさんはまだまだ発展途上です。

「何をやったかより、誰がやったか」という有名な言葉があります。

芸能人などでもそうですが、「ファン」という存在は「推しの姿を見るために」ライブや映画・番組を見る傾向が強いように思います。

声優や俳優の場合、推しが演じるキャラに感情移入する人も多いでしょう。

POSUKE視聴者の中には、参加者さん目当てで配信を見に来ているファンも多く、その中に知らないコモラさんがいても、感情移入や応援をするのは難しかったでしょう。

また、コモラさんは"イキり"が持ち味のキャラでもあるので、初見の視聴者が多いと厳しかったかもしれません。

ファンとしては悔しい気持ちもありますが、コモラさんにとってアウェーな環境だったと考えると、致し方無いのかなと思います。

ぽこピーもその点を予想していたからこそ、緩い空気が流れる朝の枠にコモラさんをキャスティングしたのでしょう。

知名度と実力、そしてキャラクター性まで考え、(生配信なので)タイムキープもしなければならない…。

シエンさんのファインプレーの件も含め、エンタメを成立させるのは難しいものなんだなぁ…と改めて実感しました。

月見草よりど根性野菜

今回の企画でもう1つ気付いた点は、高難易度ゲームの世界のディープさです。

soleaさん監修のマリオメーカー2のコースは、我々一般のゲームユーザにしてみれば「難しすぎる」ものでしたが、コモラさんのような高難易度ゲーム常連のコアユーザにとっては「簡単」なのです。(配信での発言より)

あくまで私見ですが、ゲーム実況動画で人気を集めるゲームは基本的にプレイ人口が多いゲームであり、その理由は「多くの人が共感できる」からだと推測しています。(例外ももちろんあります)

「このクリア方法、自分も試してみよう!」

「そのミス、わかる。俺もよく引っかかったよ」

というように、共感出来たり自分で再現できるから盛り上がれるのだと思います。

バグ動画も人気ですが、GTAシリーズやゼルダの伝説Botw、ポケモンのように、元々のプレイ人口が多いゲームがネタになるケースが多いと感じます。

RTAやスピードラン系の競技性があるジャンルも一定の人気がありますが、一般層にとっては再現性が低く共感が難しいため、メインストリームまで浮上することはなかなかないようです。

まして「Jump King」「LOST EGG」「Celeste」のB面やC面のような「初めから鬼畜ゲー・死にゲーが好きな人をターゲットとしたゲーム」などは尚更でしょう。

プロ野球選手の野村克也氏は、高い実力を持ちながら人気選手の陰に隠れていた自分のことを指して、

「長嶋や王(人気選手)はひまわり。私は日本海の海辺に咲く月見草」

と詩的に例えました。

高いゲームスキルを持ちつつ、ゲーム実況のメインストリームからはやや外れ、コアな高難易度ゲームをプレイするコモラさんのような配信者達にも、この比喩は当てはまるかもしれません。

しかし、私はコモラさんには別の印象も抱いています。

コモラさんのゲームスキルの高さは動画を見てもらえばわかりますが、彼の本当の凄さは忍耐力と諦めずに挑戦する力、つまりメンタル面にあります。

以前の記事でも紹介した通り、難易度が高すぎてクソゲーに片足を突っ込んでいるようなゲームでも諦めずにプレイする胆力には驚くべきものがあります。

また高難易度ゲームに対するアンテナも広く、有名配信者が見つけてブームになる前に手をつけている事も多いです。

▲Jump Kingの実況動画。コモラさんは日本で話題になるより先に一足早くプレイしていた

先程、コモラさんのイキりを「なろう系」のようだと表現しましたが、なろう系と言っても「俺、なんかやっちゃいました?」というタイプではありません。

練習動画を見てもわかるように、コモラさんはひたすら死にまくりながらコースを攻略していました。

▲練度が上がっても、やはり凡ミスはある。これが死にゲーの醍醐味

元々持っているスキルに加え、何度も練習して努力するからこそ、イキれるほどの実力を手に入れることが出来たのです。

このことを考えると、私はコモラさんは月見草というよりは「ど根性野菜」のようだと思っています。

ど根性野菜 - Wikipedia

ニッチなジャンルに根を張り、コンクリートのように厚い難関を突破してクリアという実を結ぶコモラさん。

これからも視聴者に、コモラさん流のエンタメとイキりを存分に見せつけてもらいたいものです。