頭の中の小さな引き出し

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ぽこピーの活動の変遷から考える、Vtuberシーンの変化と2人のこれから

どうも、「刀ピーOverdose」の激バズりに乗っかってTwitter「千バズ」を経験してしまい、若干困惑している筆者です。

「刀ピーOverdoseって何?と思われた方はこちらの記事をご覧下さい。

さる2月2日、甲賀流忍者!ぽんぽこさんのyoutubeチャンネル「ぽんぽこちゃんねる」が活動開始から5周年を迎えました。

彼女のチャンネル登録者数は現在40万人を突破しています。

また、そのゲストであり相方でもある「オシャレになりたい!ピーナッツくん」のチャンネルも同日に登録者29万人を突破するなど、「ぽこピー」の2人は2023年に入っても非常に好調です。

しかし、この2人はここまで常に順調に活動してきた訳ではありません。

Vtuber、そしてYoutuberを取り巻く環境は常に変化しており、ぽこピーもそれに合わせて活動を変化させて来ました。

今回の記事ではその活動の変遷、そして2人のこれからについて考察してみたいと思います。

⒈ 創成期(2017年~2018年)

「ぽこピー」というユニットが誕生したのは2018年3月16日です。

そもそも「甲賀流忍者!ぽんぽこ」というVtuberは、2017年から個人制作アニメとして配信されていた「オシャレになりたい!ピーナッツくん」という作品のスピンオフキャラクターとして誕生したものでした。

アニメの主人公であるピーナッツくんと、スピンオフキャラであるぽんぽこ。

2人が初めて邂逅したのがこの日だったのです。

これ以降、ぽんぽこさんのチャンネルに「ゲスト」という形でピーナッツくんが登場するようになります。

このころは1週間に1度ほどの頻度で生配信を行うのが主な活動スタイルでした。

まだ誕生して間もないぽこピーがVtuberの世界で存在感を発揮するキッカケになったのが、2018年5月3日に行われた「ぽんぽこ24」という24時間生放送でした。

このような長時間放送をするVtuberは当時としては非常に珍しく、またゲストとして多数のVtuber個人や企業の垣根を越えて参加したため、異例のコラボとして大きな話題を呼びました。

2018年10月にも再び24時間生配信を成功させ、大きなムーブメントに成長したVtuberの発展に伴い、2人のファンは増えていきました。

実は、2人のこれらの活躍にはYoutubeの仕様」も関係していました。

2017年頃、Youtube「生配信を行っているチャンネルを上位やオススメに表示する」という仕様を取り入れていました。

この仕様により、配信メインに活動していたにじさんじ「アイドル部」「ホロライブ」といったVtuber達が多くのファンを獲得するようになり、界隈が大きく発展しました。

つまり、ぽこピーが武器にしていた「定期生放送」「24時間生放送」というコンテンツは、当時の時流に非常にマッチしていたのです。

⒉ 模索期(2019年~2020年)

2019年1月3日、ぽこピーの2人は動画の毎日投稿を開始すると宣言しました。

Youtuberは、生配信をメインに行う「配信勢」「動画勢」に大別されます。

ぽこピーは、それまでの「配信勢」のスタイルから転身して「動画勢」として活動することを決めたのです。

これは大きな変化でした。

生配信が人気を得ていたVtuberの世界の時流に逆らうような動きに、当時の筆者も不安を感じたのを覚えています。

実際、当初は(今と比べれば)クオリティが低めの動画や再生回数が伸びない動画も多く、2人が苦労している様子が見えました。

同じ時期、HIPHOPをメインに音楽活動を行うユニット「レオタードブタとヤギ・ハイレグ」のアルバムが発表されたり、ABC・NHKなどのテレビにも出演するなど、メディアへの露出が増えていきました。

また、ファン向けのリアルイベントも複数回開催され、グッズを手に入れる機会がそれまでに比べて増えました。

弊ブログによるリアルイベントの現地レポート。

ゆるキャラグランプリの「企業・その他部門」に着ぐるみを制作してエントリーし、2019年はピーナッツくんが、そして2020年はぽんぽこさんが優勝したのも記憶に新しい出来事です。

ゆるキャラグランプリで優勝しても、原宿での知名度は…。

このように列挙してみると、ぽこピーの2人が驚くほど多方面に手を伸ばしていることがわかります。

動画制作、音楽活動、リアルイベント、ゆるキャラ、タレント活動…

「とにかくやれることは片っ端からやってみよう」「チャレンジしてみよう」という2人の意気込みが感じられます。

また、グッズの販売やイベントが増えたことにより、「ぽこピー」という存在が「IP」として強みを持ち始めている点にも注目できます。

当時の2人を取り巻く環境に目を向けると、「企業勢の躍進」「コロナ禍」という2つの大きな変化が浮かび上がってきます。

2018年にVtuberブームが初まった頃、「個人勢(自らキャラクターのマネジメントを行うフリーランスVtuber)」「企業勢(事務所に所属して活動するVtuber)」パワーバランスはさほど大きなものではありませんでした。

しかし、時間が経過して2019年になる頃には、両者の差は大きく開いていました。

配信機材の提供やマネージャーなどのサポートを受けられる企業勢と違い、個人勢は全てを自分で管理する必要があるのですから、後者が不利になるのは必然と言えます。

特に、先程述べた「配信勢」においては企業のVtuber達が圧倒的な強さ(=数字)を持つようになり、個人勢は苦しくなっていきました。

この事を考えると、「配信勢」として企業と需要を食い合うのではなく、動画の毎日投稿やイベントの開催によって独自のファン層を獲得していくスタイルに切り替えたぽこピーの2人の判断は、結果的に正解だったと言えます。

また、2020年初頭から始まったコロナ禍により、Youtubeの視聴者数や視聴時間が大きく増加したことも大きな出来事でした。

これによりVtuber界隈に一種のバブルが発生して全体的に視聴者が増え、ぽこピーもその例に漏れず、さらにファンを獲得していくことになりました。

⒊ 確立期(2021年~)

2021年以降、ぽこピーの活動は安定感を増していきました。

動画の分野ではガチ恋ぽんぽこ」「サウナレビュー」「VRホラー(ピ虐)」「100均」など、好評だったコンテンツがシリーズとして確立されるようになりました。

ガチ恋ぽんぽこ(ぽんぽこの別人格)が過酷なチャレンジをする人気シリーズ。

「サウハラ」が社会問題に発展する日も近い…?

また、グッズの販売がコンスタントに行われるようになり、過去のグッズも再販されて手に入りやすくなったことも、ファンとしては嬉しい変化でした。

ピーナッツくんが個人名義で展開していた音楽活動も軌道に乗り始めます。

2020年の「False Memory Syndrome」に続いて「Tele倶楽部」「Walk Through the Stars」と2つのアルバムが相次いで発表されたほか、日本最大級のHIPHOPフェス「Pop yours」にも出演するなど、活躍の場はさらに広がりました。

また、新型コロナウイルス関連の行動制限が減った2022年の後半には、ファン向けイベント「ぽこピー展」が全国6都市で開催されました。

参加したVtuberさんによるレポート動画。「同業者」も沢山訪れたようです。

この期間の環境の変化として上げられるのは、Youtube収益の減少」です。

コロナバブルにより勢いが止まらないように見えたYoutubeビジネスでしたが、国際情勢の変化や景気の動向により、Youtuber達の広告収益は以前と比べると減ってきています。

実際に日本のトップYoutuberであるHIKAKIN氏も動画内で言及するなど、この問題は深刻になってきています。

当然ぽこピーもこの影響を受けているはずですが、同時並行するようにリアルイベントやグッズ販売などに力を入れており、多少の影響はあったかもしれませんが、一定の収益は確保出来ている可能性があります(あくまで憶測です)。

この点においても、結果的には賢明な判断だったと言えるかもしれません。

ぽこピーのバランス感覚

私が思うぽこピーの最大の強みは、バランス感覚です。

1つのコンテンツに傾倒しすぎるのではなく、バランスよく様々なコンテンツを提供してくれます。

これはとても難しいことです。

私が「一点突破型」と呼んでいるYoutuberの人たちは、1つのコンテンツに注力することでファンを獲得します。

例えるなら「釣り」「虫食い」「音楽」「ゲーム配信」などです。

対して、ぽこピーのような「バラエティ型」のYoutuberは、ゲームやグルメ、音楽、ガジェットなど様々なコンテンツをバランスよく扱わなければなりません。

トレンドにも常に敏感でいなければなりません。

先に挙げたHIKAKINさんもこのタイプですが、「ニワカ過ぎても嫌われ、ディープすぎても付いてこない」という、いわば綱渡りのような活動を行っていると考えると、その苦労は計り知れません。

ぽこピーはこの点で成功していると言えます。

2023年1月27日に投稿された動画「はだかモコピ」がその良い例と言えるかもしれません。

この動画に出てくる「モコピ(mocopi)」とは、ソニーが開発した屋外でも使用可能なモーションキャプチャーです。

2023年1月20日に発売され、防水・軽量・安価とあってVtuber界隈でも話題を呼びました。

動画を見てもらえるとわかりますが、ピーナッツくんの情けない痩せ我慢を見て笑いつつ、モコピの防水性やモーションキャプチャーの精度もわかるという、1粒で2度美味しい構成になっています。

つまり、ライト層向けのネタ動画ガチ勢向けのレビュー動画の要素がそれぞれ混在しているわけです。

この動画はファンに好評を博し、現時点で34万再生を超えています。

確かに、何度も見たくなる面白さがあります。

このように、トレンドを捉えつつも独自性を出し、ともすれば新しいブームに繋がりかねないコンテンツを作り上げる点で、ぽこピーは能力を発揮していると言えます。

TikTok1億回以上再生され、Youtubeでもつい先日1000万再生を超えた「刀ピークリスマスのテーマソング2022」も、似たような側面を持っていると言えるかもしれません。

刀ピークリスマスに関しては、詳しくはこちらの記事を参照してください。

ぽこピーに求められているものとは?

自分で書いておいてなんですが、これは難しい質問です。

多分ぽこピーの2人にも分からないのではないでしょうか。

しかし、私が個人的に抱いている印象から言わせてもらうなら、「手作り感」「アットホーム」という点が挙げられると思います。

ぽんぽこちゃんねるの動画のコメント欄では「兄妹の仲が良くて羨ましい」というようなコメントがよく見られます。

これは、ピーナッツくんのご主人様(中の人)がぽんぽこさんの実の兄(兄ぽこ)である事に起因するコメントです。

この辺りの話は大変込み入っていますので、気になる方は調べてみてください。

つまり、一部の視聴者は2人の「アットホーム感」を楽しみに動画を見ていることがわかります。

確かに、「はだかモコピ」の動画などを見ていると「家族で何やってんだ」という微笑ましい感情が生まれてきます。

私は「はだかモコピ」を初めて視聴した時、HIKAKINさんの人気動画「お正月ダイブ」を思い出しました。

毎年恒例、冬の風物詩。

そういえばこの動画内でも、HIKAKINさんは実の兄であるSEIKINさんと雪の中で戯れています。

つまり、このような「ファミリー」「アットホーム」という路線には一定の需要が存在することがわかります。

また、ぽこピー展では2人が制作した手作り感溢れる展示壁新聞が好評でしたが、このような「手作り感」もぽこピーを語る上で大切な要素と言えます。

ぽこピー展で書き下ろされた壁新聞。

「ファミリー」であるぽこピーが「アットホーム」な雰囲気で「手作り感」を失わずに活動してくれること、これこそが視聴者が求めているものなのかもしれません。

私たちのような素人は、

「なぜぽこピーは伸びてきたのにスタッフを雇わないんだろう?」

「起業するべきなのでは?」

と短絡的に考えてしまいがちですが、視聴者はそのようなお金の匂いや人の動きに意外と敏感です。

お金を使う企画で「変わっちまったな…」というコメントが付くのは、Youtuberを追っている人ならあるあるネタとして理解できるかもしれません。

ぽこピーはそのような雰囲気を極力出さず、あくまで2人のペースを保ちながら活動しています。

これは、視聴者が配信者に親近感を抱き、その活動に「心の歩調」を合わせていく上で、非常に大切なポイントと言えます。

ライフワークとしてのVtuber

Vtuberブームの始まりから5年以上が経過した今、この界隈は大きく様変わりしてきています。

100万人単位の登録者を抱えるVtuberが増え、視聴者の性別や国籍も多様化しています。

デビューする人もいれば、引退する人もいます。

この不安定とも言える世界の中で、個人的に気になっているのが「ライフワークとしてVtuber活動をしている(と思われる)」クリエイターの存在です。

かねてより私はVtuberとはアバターの一種である」と考えていました。

単なるキャラクター文化ではなく、才能を持つクリエイターが、能力を発揮したり新たな活動にチャレンジするための"機会"を創造する文化だと捉えています。

現在活躍しているVtuberの中にも、そのような活動形態を取っている人がいます。

月ノ美兎さんはバーチャルライバーグループにじさんじに所属している所謂「企業勢」ですが、ネットやサブカルに造詣の深い本人の趣味を活かし、「シモ・エモ・奇妙」の三拍子揃った活動スタイルを確立。

他とは一線を画す存在感を放っています。


秘宝館レポート配信(シモ)。

まるでアイドルのようなダンスと歌の配信(エモ)。

珍スポット探訪動画(奇妙)。

最近では日本全国を巡って珍妙なスポットを探訪したい、という壮大な野望を語っており、彼女の活動はまだまだ続いていきそうです。

その活動スタイルは、今では少しづつ廃れつつある"ブロガー"に通じるものがあります。

  • さえきやひろ

マルチクリエイターVtuberとしてフリーランスで活動するさえきやひろさんは、企業や個人からの2D・3Dモデルの制作依頼を請け負いつつ、イラストや楽曲・動画制作、配信など様々な創作活動を行っています。

作詞・作曲を担当しているのは「ONEPIECE FILM RED」にも楽曲を提供した「FAKE TYPE」。

「ものづくりVtuberを自称し、「さえきやひろ」という自分自身さえも作品の一つとして活動する彼女は、まさに"クリエイターのど真ん中"を往く存在と言えます。

  • 社築

月ノ美兎さんと同じく「にじさんじ」に所属する男性ライバーである彼は、自他共に認めるオタクVtuber

プログラマーという経歴を活かし、ディープな知識をゲームで活かしたかと思えば、音ゲーガチ勢として「プロジェクトセカイ」の案件を貰うなど、「好きなことで生きていく」というオタクの夢を体現したような存在です。

プログラマーらしい視点で語ってくれます。

プロジェクトセカイの案件動画。

私は、このような「自分のペースを貫く活動スタイル」こそ、Vtuberの究極なのではないかと思っています。

筆者もオタクなのでそれなりに長くネットを見てきましたが、登録者100万人などを目標に掲げてがむしゃらに活動したあと、急激にフェードアウトして休止してしまった配信者を沢山知っています。

原因は様々ですが、多くは目標を失ったりモチベーションが低下したことが理由でした。

2023年1月23日に引退を表明した車いすテニスの最強選手・国枝慎吾さんも、強すぎた故にモチベーションの低下に悩まされたそうです。

どんなに優れた能力を持つ人でも、目標を失って燃え尽きてしまえば、活動を続けることはできません。

2022年12月24日にぽんぽこちゃんねるに投稿された動画の中で、ぽんぽこさんは「動画に対して熱くなりすぎていたと思った」「考えが変わってイベントを増やした」と語っています。

その一方で、「ずっと業界の中でギラギラしている」とも語っていました。

2人の貴重な本音が聴けます。

これらは一見すると相反する意見のようですが、「熱意を失わずにモチベーションを保つため、気持ちを切り替えた」という意味の発言だったようです。

いずれにせよ、クリエイターとして抱える矛盾を消化していく上で、非常にリアルな心境が吐露されていると感じました。

先日行われたぽんぽこちゃんねるの5周年記念生放送では、何度か「10年後もやろう」という言葉が出てきました。

モコピクイズ、デカキン師匠との号泣対談など盛り沢山の配信でした。

ファンとしては、この言葉はとてもうれしいものでした。

ぽこピーは常にやりたいことや目標を見つけながら活動しています。

まさにライフワークとしてのVtuber活動と言えます。

今後、困難なことや大変な変化が2人を待ち受けているかもしれませんが、ぽこピーの2人は必ずそれを乗り越え、新しい光景を見せてくれるはずです。

私はそう信じてやみません。