頭の中の小さな引き出し

思ったことを書きます。たぶんほとんど更新しません。

"レンタルぽこピー"ウィークで見えた「Vtuberの原風景」

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2022年3月。

私は少々疲弊していました。

不穏な世界情勢。

迫り来る花粉症。

Vtuberの始祖、「キズナアイ」の無期限活動休止。

大物Vtuberのスキャンダルと解雇、そして暴露。

Twitterトレンドに「Vtuber」が上がる時はだいたい炎上関連。

自分にとって娯楽や趣味であるはずのVtuberに影が差している。

そう思う時もありました。

さらに追い打ちをかけるように、筆者の最推しV「甲賀流忍者ぽんぽこ」さんの編集用パソコンが壊れてしまい、動画投稿が出来なくなるという悲劇が起こります。

もう終わりだよこの世界。

しかし、ぽんぽこさんとピーナッツくんはこの危機的状況をチャンスに変えました。

新しいパソコンが届くまでの1週間、コラボの誘いに乗りまくってその数を競うという企画、「レンタルぽこピー」を立ち上げたのです。

正直な話、筆者は当初「確かに面白そうだけどコレジャナイんだよなぁ」と思っていました。

私はぽこピーの2人が楽しく喋っている動画が好きなのであって、他のVにはそんなに興味が無かったのです。

しかし、コラボ動画が積み重なるにつれ、その感情は薄れていくことになりました。

尋常じゃない「フッ軽」さ

まず私を驚かせたのは、ぽこピー2人のフットワークの軽さです。

ぽんぽこさんは以前から知らぬ間に面白いコラボを取り付けてくることに定評があり、「ぽこピーの渉外担当」とも言える立ち位置でした。

しかし、今回の企画でピーナッツくんの"フッ軽"ぶりも相当なものであると気付かされました。

ピーナッツくんはコミュ障キャラとしても知られており、企画当初は

「ちゃんとコラボの誘いに乗れるのか?」

「ぽんぽこに惨敗してしまうのでは……」

という危惧の声もファンからは上がっていました。

しかし、蓋を開けてみればぽんぽことピーナッツくんのコラボ数は非常に僅差となっており、心配は全くの杞憂であったことがわかります。

7日間の企画の中で、2人がコラボした動画は実に40本を超えており、それぞれの撮影時間を考えると相当にハードなスケジュールだったのではないでしょうか?

レンタルぽこピー - YouTube

そんな中でも疲れを見せずに元気に振る舞うぽこピーのバイタリティの高さには驚かされます。

コラボ動画の多様さ

次に感心したのは、コラボしたVtuberさん達の企画の多種多様さです。

私が今回のレンタルぽこピー企画を気に入るきっかけとなった動画をご紹介しましょう。

「アメひとつ」さんとピーナッツくんのコラボである「カニvsヤドカリ!」配信です。

▲2人ともペットを「キモッ!」と思う瞬間があるそうです。

なんだそりゃ?と思う人が多いと思いますが、本当に「なんだそりゃ?」です。

ピーナッツくんはサワガニをペットとして飼っているのですが、アメひとつさんはヤドカリをペットとして可愛がっているので、どちらが可愛いか甲殻類トークで激論を交わす、という内容の配信です。

わからん!(千鳥ノブ)

しかし、これが不思議と面白いのです。

アメひとつさんのテンポの良い上手なトーク回しによってピーナッツくんも楽しそうにしていましたし、2人が「キモカワ」で意気投合して視聴者が置き去りになる様子は、まさにヤムチャ視点でした。

企画は好評のうちに終わり、アメひとつさんのチャンネル登録者数がコラボ前の数倍に激増するなど、埋もれていたVtuberさんを発掘する機会としても有意義なコラボとなりました。

ぽんぽこさんと「2次元カメラマンVtuber」のKAZUMAさんのコラボでは、3DアバターをVRchat内のブースで撮影し、現実の写真と同じように仕上げるという、なんとも近未来的な企画が行われました。

▲オシャレすぎるKAZUMAさんの服にも注目。

今後「メタバース」やVR技術がさらに活用されるようになれば、当然仮想空間内での写真撮影やモデルの仕事も需要が出てくると考えられます。

いつか到来するであろうバーチャルな新世紀に思いを馳せる良い機会となる動画でした。

ピーナッツくんが「紫桃あのん」さんとコラボした動画では、「遠隔操作クッキング」が行われました。

▲無駄にイチャイチャしててこっちが恥ずかしくなってきます。

遠隔操作でスーパーの食材を買ってきてもらい、ちゃんとした料理が作れるのか検証する企画です。

ピーナッツくんとあのんさんは以前に「バーチャルバチェラー」という企画で面識があり、"フッた元カノ"という設定の元に繰り広げられるむず痒いトークはなかなか味わい深く、私のお気に入りの動画の1つとなりました。

他にも沢山のオススメ動画があります。

ガチ恋さんが出演する寸劇コラボ落ち着いたトークが楽しめるラジオコラボテレビ出演・MV出演コラボピーナッツくんがとち狂った魔法少女たちに翻弄された挙句衝撃の結末を迎える懐古厨歓喜のちあめあコラボなどなど、挙げ出せばキリがありません。

▲普段は出てこないぽんぽこさんの一面が見られます。

▲こちらもクリエイターとしてのピーナッツくんのスタンスが見えるラジオ。

▲退廃的な曲調が印象的な楽曲コラボ。

▲安心してください。2人は頭がおかしいんです。

ぽんぽこさんは持ち前のコミュ強ぶりを活かしたVRchat内での「オンライン・オフコラボ」(意味不明だけどこう形容するしかない)の動画が多い傾向がありました。

一方のピーナッツくんは、持ち前の女たらし属性(!?)を活かした女の子とのコラボや、ラップコラボを多くこなしていました。

企画内容にもそれぞれの持ち味が発揮されており、その違いも楽しむことが出来ました。

また登録者帯に関係なくコラボに応じており、数字や経歴に左右されない2人の良さが出ていると思いました。

Vtuberの原風景

今回の「ぽこピーレンタル」を通じて、私は2018年のVtuberに初めて触れた頃を思い出しました。

企業・個人問わず次々に出てくる得体の知れないVtuberたちを見て、新しい文化の萌芽を感じつつワクワクしていたのを覚えています。

まだ色んな人が活動方針を模索していた時期で、当時は非常に荒削りなVtuberや企画が沢山ありました。

ぽこピーもその中の1つでした。

コミケで撮影したVtuberコスプレの写真をLive2Dモデルの横に並べて、勝手に「コラボ」と言い張っていた事もありました。

今回のぽこピーレンタルコラボでも荒削りなものはある程度ありました。

前述したような「勝手にコラボ」系の動画もありましたし、配信でのグダリも見られました。

このような"粗さ"や"ミス"は減らしていくべきものですが、一方でそれを恐れてチャレンジしなければクリエイターは成長できません

一般に物事は洗練されるとクリエイティビティを失うと言われています。

安定を求めると冒険しなくなるからです。

だからこそ、業界のトップランナーたちは挑戦を忘れません

挑戦と失敗こそクリエイターの根幹をなすものなのです

今の自分は洗練されたものに触れすぎて、ちょっとの綻びさえも許容できなくなっていないだろうか?と改めて自問する機会になりました。

Vtuberの誕生から4年以上が経過し、配信者やファンの裾野が広がると共に全体的に停滞するような空気を感じていましたが、根底の部分では初期の頃と何も変わっていない、と改めて思いました。

私は初期から一貫して「Vtuberアバター文化の1つであり、隠れていた才能が表に出てくるためのものだ」というスタンスでしたが、今回の企画はその実感を強めてくれました。

Vtuberは「時期尚早のカルチャー」だ - 頭の中の小さな引き出し

▲こちらの記事も参照。

そこにあったのは、私がVtuberを追い始めた時に見たものと変わらない、まさに原風景でした。

ちょっと普通では思いつかないような、または思いついてもやらないような企画にチャレンジする人がいます。

まだ全然世間に見つかっていないけど、実はすごい事をやっている、そんな人がいます。

こんな人達がアバターと共にネットの海に潜伏しているからこそVtuberは面白いのです。

上辺の数字や一部の派手な部分だけを見て、「絵がゲームやってるだけじゃん」だの「Vtuberは死んだ」だのと言う人がいますが、それはやはり勿体ない見方だと思います。

Vtuberの世界はまだまだ続いている。

これからも色んな面白い人達が出てくる。

そう期待を抱く機会を与えてくれたぽこピーと、コラボしてくれた全てのVtuberさん達に感謝したいです。