頭の中の小さな引き出し

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False Memory Syndrome #フォルメモ の雑感

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さる6月30日、ピーナッツくんが初めてのオリジナルアルバム「False Memory Syndrome」をリリースしました。

アルバム全体を通して非常に高いクオリティで、素晴らしい楽曲ばかりでした。

各種配信サイトへのリンクはこちら↓

この記事では、私がこのアルバムを聴いた感想や、曲の考察(のようなもの)を衝動のままに書いています。

乱文・駄文の上に妄想などが激しいのでお気をつけください。

1. DUNE!

記念すべき初アルバムの1曲目を飾るにふさわしく、非常にノリの良い楽曲です。

この曲を聴くことで視聴者のテンションは一気に上がり、この後に続く楽曲に向き合う準備をすることができます。

タイトルのDUNE!の元ネタですが、「DUNE/砂の惑星」というSF映画が存在します。

1965年に発表された小説が原作となっており、砂漠の惑星で繰り広げられる争いの物語です。

1973年に製作されましたが、10時間以上の長編であった事や、製作費が巨額だった事から製作中止となりました。

しかし、製作スタッフはこの映画をきっかけとして1979年に「エイリアン」を完成させることになります。

楽曲の中に何度も「惑星(ピーナッツ星)」という単語が出てくるため、おそらく元ネタになっているのでは?と思われます。

事実であれば、映画に詳しいピーナッツくんらしいネタです。

ちなみにDUNEはリブート版が製作されており、2020年に公開される予定です。

2. ピーナッツくんのおまじない(feat.チャンチョ&オレンジ博士)

「ピーナッツくんのおまじない」という曲自体は、「ピーナッツくんが友達を見つけて真空パックに閉じ込める」という白昼夢のような企画動画の中で使われていた曲ですが、今回のアルバム収録にあたってリリックやメロディが大幅に追加されています。

My name is ピーナッツくん

黄色い体で目立ってる

生きてる証を刻んでる

オシャレになりたいピーナッツくん

JKも兄ちゃんも

僕らの虜になって変な状況

というリリックからもわかるように、ピーナッツくんのアイデンティティが紹介されています。

兄ぽこ(と思われる人物)が、

間違いなく君はピーナッツくんだ

僕を救ってくれたマイヒーロー

と歌い、

僕の名前 ピーナッツくん

授かった名前はピーナッツくん

この声 カラダ 君との違いが

僕がピーナッツくんたる所以さ

とピーナッツくんが返すバースは、アニメや制作秘話を追ってきた者にとっては涙を流さずにはいられない名場面です。

3.グミ超うめぇ

浮遊感のある心地よいトラックに乗せて「グミがとにかく美味い」とピーナッツくんがひたすら連呼する曲。

一瞬内容が薄いようにも思えますが、ピーナッツくんの年齢設定が5歳であるということを考えるとなんとも微笑ましくなってきます。

Fワードや「グミ」という隠語的意味合いのある単語をhiphopへのリスペクトとして用いつつ、アニメの設定とも上手くリンクさせようという兄ぽこの意図が見えます。

プリフランボワーズさん(https://twitter.com/pre_framboise)製作による素晴らしい世界観のMVも公開されており、こちらも必見です。

4. Kick!Punch!Block!(feat.デニムくん)

無敵のドM野郎であるデニムくんが、「もっと暴言を吐いてくれ、足りねえぞ」と煽る楽曲。

私のお気に入り曲の1つです。

デニムくんと言えば、アニメ本編の第5話で初登場した古参であり、今もなお第一線で活躍している名バイプレイヤーの1人。

「デニム玄師」として投稿した歌ってみた系動画の総再生数は50万回を超えるなど、意外な人気キャラでもあります。

デニムくんは自分の履くジーンズをダメージ加工するために暴言を求めて気持ち悪い言動をするわけですが、この歌の中でも、

君 生理的に受け付けないけど

僕生理的に君 知りたい

舐めさせてよ 靴べら代わりの僕のベロ

アスファルトに君が吐いたツバを

指ですくって口に入れてキメる

など、思わず「うわぁ…」と言いたくなるようなキツめのセリフが出てきます。

しかし、ノリの良いフロウとデニムくん特有のハイトーンボイスと合わせて聴くと、不思議と不快感は無くなります。

むしろちょっとエロかっこよく(!?)感じたり。

マゾ 行き過ぎたら僕 サド

と歌っているように、デニムくんは暴言を吐かれすぎて多少の罵倒ではまったく動じなくなっており、それゆえに謎の「強キャラ感」を醸し出しています。

特に、最後にまくし立てる

名無しの書き込み何ちゃんねる

見てるクソガキのあっかんべー

IDなしでも大歓迎

マジみんな見てる正直な話

ていうか素直な意見がそれでも

的外れでは面白くないからみんな鍛えてよ

という部分は、デニムくんの更に奥にある存在が表出してきたような熱量があり、非常に痛快なパンチラインとなっています。

5.おねがいマーニー

「マーニー」は思い出のマーニーではなくMoney。

いわゆる「金稼ぎ系ラップ(と勝手に僕が呼んでいるジャンル)」です。

実は私は世の中のマニマニ言うタイプのラップはあまり好きじゃないのですが(すぐ浴槽にお金貯めたり女性ダンサーの頭の上からお札降らせたりするから)、この曲はどちらかと言えば「お金を稼がなきゃやっていけないんだよ…」というような内容であり、訥々と語りかけるようなフロウが哀愁を誘います。

リリックの随所にピーナッツくんのVtuberとしての苦労が感じられ、

ゆるキャラハスラー

いつか乗ってるマスタング

僕はバーチャル土方 現場先は儲かった

逆にしょぼい奴は路肩 野垂れ死ぬことなく良かった

ピンハネ 隠してたの許さねぇ

その気になりゃ TwitterにDM晒すことも出来る

だけどバカのやることでしょ

という部分は、世知辛すぎて胸が締め付けられます。

溢れかえる万札 そんな事よりも先

周り幸せならlucky それじゃ足りないんじゃマジ

稼ぎまくる見ててmommy

と歌い上げる姿は、もはや令和の森進一と言っても過言ではないでしょう。

6.レオブタ解体ショー

ピーナッツくんのアニメ世界で売れっ子MCとなったレオタードブタがイキリまくるこの曲。

あちこちで兄ぽこ成分が補給できます。

兄ぽこファンは必聴でしょう。

「知らねえやつはビビって腰振れ、ランドセル背負ったガキからストリートのあんちゃんまで驚かせてやるぜ」というレオブタの正統派なイキリが非常に心地良いです。

しかし売れててもやっぱりおしりは血まみれなんだな…。

完治したんじゃなかったっけ?

7. Pokemon Purple

2曲連続でレオブタ曲。

以前にYouTubeに投稿された曲(上記リンク)と基本的に同じですが、セリフ部分が追加で収録されています。

また、この曲は名義こそレオタードブタですが、

あいつらは飼い慣らされ鈍る勘

生きるか死ぬかどうかお前

トレーナーいなきゃ何も出来ないんですか

というリリックなど、V界隈をポケモンに喩えていると思われる箇所が複数あり、色々と考察が捗ります。

8. ねむれないクリスマス(feat.ジョビルボ松本)

"正統派"子供向けクリスマスソング。

クリスマスはなんだかソワソワしちゃうよネ!と歌うピーナッツくんが非常に可愛いです。

ちなみにアニメ本編でこの曲が流れる回はYouTube側が「子供向けに制作された動画」として認定しています。

しかし、ジョビルボ松本の素性がさっぱり分からない…。

結局いきなり現れてピーナッツくんと一緒に歌っただけだし…。

9.おやすみグッナイ(feat.チャンチョ)

チャンチョ、いやチャン様の美声が聴ける曲。

ピーナッツくん関連では珍しい非ヒップホップ楽曲です。

「面倒臭い事ばかりだ、静かに眠らせてくれ」と切実に訴えるチャンチョに涙を禁じえません。

僕は僕だけのオリジナルを探す

僕は最後に取り残されたアンカー

という歌詞がとても心に残ります。

ふざけて原理主義とか言っててごめんな…チャンチョ…。

10. 幽体離脱(feat.チャンチョ&ぽんぽこ)

Twitterで検索してみると、この曲をお気に入りとして上げている人が最も多かった気がします。

私も大好きな曲です。

メロウな雰囲気のトラックに透き通るようなぽんぽこのコーラスが特徴的なこの曲は、何度聴いても鳥肌が立ちます。

リリックの内容としては、夜中にチャンチョが感じる孤独を歌っています。

アニメ1期の最終話を思い出して、なんだか切ない気持ちになってしまいました。

また、裏のテーマとしてVtuberとしての「肉体(ガワ)」と「精神(魂=中の人)」が分離している時の独特な感情を歌ったものなのかな?と解釈しました。

虚無だけど虚無じゃないような今日この頃

ターザンもシンバも司会なんてしないだろ

アイドル環境じゃ僕は生きられないから

空中遊泳でクロールしよう

この部分などはまさにそんなイメージを抱かせます。

歌唱はチャンチョですが、ピーナッツくん、そして兄ぽこの感情も明らかに混ざっています。

この曲をぽんぽこと一緒に歌ったところに、なんとも言えないエモさを感じたり。

天井の隅に巣食ってる 蜘蛛と目が合って

挨拶交わすよ毎晩 まるで天国の階段

というリリックがありますが、天国への梯子=ジェイコブス・ラダーという事で、夢の中の偽の記憶、アルバムのタイトルである「過誤記憶」とかかっているのかな、と思ったりしました。

考えすぎかな?

(気になった人はジェイコブス・ラダーで検索してみてください。怖いので気をつけて…)

11. Drippin' Life

アルバムのラストを飾る曲。

「drippin'」という言葉はスラングの一種であり、「かっこいい・魅力的」という意味があります。

おやすみグッナイ、幽体離脱とややローテンションでシリアスな曲が続いたあとにこの曲を聴くと、朝が来たような明るい気分になります。

「楽しいことも辛いこともあるけど、毎日頑張ってる」という等身大のリリックがダイレクトに心に響きます。

デニムくんやオレンジ博士、チャンチョなどアニメのキャラクター達がコーラスとして参加しており、兄ぽこが作業をしている周りにアニメキャラ達が表れ、仲良く一緒に歌っているような映像が脳裏に浮かんできます。

兄ぽこ(と思われる声)が消え入りそうなトーンで

疲れるよ… いつか死ぬかも… みんなそうだろ… 日々が走馬灯…

と弱々しく歌った後、ピーナッツくんが

謎のYellowのGuy 僕は超ヤバイ

努力人の倍 それくらいしなきゃ作れない

だからみんな見てろよ 僕の描く走馬灯

面白くて急死

と歌う展開は、このアルバムのラストに相応しい演出です。

これはピーナッツくん、もとい兄ぽこからの「これからも頑張るから見てろよ!」というメッセージなのです。

そして、その姿はとてもDrippin'です。

この曲を聴くと1本の映画のスタッフロールを見ているような感動を覚えます。

総評

捨て曲一切無しのガチアルバムであり、ピーナッツくんの世界観が全体に反映されています。

おやすみグッナイ→幽体離脱→Drippin' Lifeと、曲順による仕掛けも冴え渡っています。

リリックのあちこちに製作者の兄ぽこ自身の感情が垣間見え、聴く度に新しい発見があります。

それぞれの楽曲としてのクオリティも高く、得意分野のヒップホップに留まらず様々なジャンルを取り入れており、沢山の人に聴いてもらいたいアルバムです。

この記事を見ている人で、まだアルバムを購入していない人は、ぜひ視聴だけでもしてみてください。

また、後日行われたライブ生配信で全曲披露されています。