頭の中の小さな引き出し

思ったことを書きます。たぶんほとんど更新しません。

ケリン炎上騒動に見る、リスク回避の難しさと視聴者のリテラシー

お久しぶりです。

今回は久しぶりにVtuberについての記事です。

マイナスな話題ですが、思うところがあったので記事としてまとめることにしました。

 

ケリン炎上騒動とは?


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「そもそもケリン炎上って何?ケリンはいつも爆発してるでしょ?」

その通りです。

ケリンはイカレミサイルエルフであり、愛すべき馬鹿であり、チャンネル登録者数19万人を誇る人気個人Vtuberでもあります。

彼のチャンネルはこちら↓

ケリン - YouTube

 

なぜ彼は炎上してしまったのでしょうか?

それは、この度ケリンがコラボした動画の相手が原因です。

今回、ケリンは「鳴神裁」というVtuberとコラボをしました。

彼は「ゴシップ系Vtuberであり、所謂物申す系という類の投稿者です。

動画の内容はラップバトルであり、それ自体には特に問題はありませんでした。

しかし、相手の鳴神裁に問題がありました。

私の記事で彼の行いを列挙するのは色々とキツイものがあるので、詳しく知りたい方は彼の大百科を参照すると良いでしょう。

端的にまとめられています。

鳴神は、私の応援しているピーナッツくんとぽんぽこさんに対しても「2人は隠れ企業勢であり、卑怯だ」という根拠の無い中傷動画を投稿した事もあります。

この件は長く尾を引き、ついに2人が生放送で公式に否定する事態にまで発展しました。

生放送のアーカイブ

鳴神はこの後も適当な謝罪で済ませ、中傷動画は今に至るまで削除されていません。(現在は限定公開)

このような経緯もあり、彼は各方面にアンチを作る存在になっていました。

そんな彼とコラボしてしまった為に、

「なぜそんな奴とコラボするんだ」

「さすがに相手を間違っている」

という批判が多く寄せられ、ケリンは炎上してしまったのです。

ケリン炎上≠モンペ騒動

「コラボしただけで炎上する」

…なんとも理不尽な話のように思えます。

本来コラボは自由なもののはずです。

ケリンが内部外部問わず多くのファンから責められ、Twitterのブロック云々で揉めている状態を見て、「どっとライブ・モンペ騒動」を思い起こした人も多いでしょう。

これもとても長くややこしい話なので、詳細は省きます。

どっとライブの騒動では、

  • 「推しているVtuberコラボ相手に自分の勝手な好き嫌いを押し付ける
  • 「コラボ相手が気に入らないからと堂々と攻撃する」

このような害悪ファン、所謂「ファンチ」(※もはやアンチと同じレベルのファンという意味、ファン+アンチの造語)の存在が広く表面化しました。

今回の件も「コラボした相手への批判の方が多い」という点で、ファンチの仕業のように見えるかもしれません。

しかし、それは違います。

状況が大きく異なるのです。

ケリンの3つのミスと最悪のシナリオ

ケリンはこれまで、バーチャルライバーグループであるにじさんじと関わりを持ってきました。

会社のCEOである「いわなが」氏をキャラクター化して自身の動画中に登場させたり、ケリン本人がファンだと公言するライバーの「エルフのえる」さんが所属していたりと、にじさんじとケリンの繋がりはとても深いものがありました。

また、ケリンの動画で使われるいわなが氏の顔写真や音声素材などは基本的に無断使用でしたが、いわなが氏はそれを許容しており、最近では「月イチ出演宣言」までするなど「親友」と言っても良い扱いになっていました。

いわなが氏やエルフのえるさんが登場する動画↓

しかし、鳴神はにじさんじグループから共演NG(もしくはそれに準ずる処置)を食らっています。

どういう経緯かは上記のニコニコ大百科を参照するとわかりますが、この事で鳴神はにじさんじを逆恨みして敵視しているのです。

にじさんじ」と仲良くしながら、「にじさんじを敵視する鳴神」とコラボ(仲良く)する……

非常にややこしい立場です。

リアルの友人関係で似たような板挟みを経験した人もいるかもしれません。

ケリンのファンにはにじさんじファンを兼任している人達もおり、彼らがコラボをよく思わないのは当然です。

またケリンはupd8というVtuber事務所に所属しており、この事務所側にも「なんでこんなコラボを許したんだ」というクレームが入ってしまいました。

(※upd8は実際は所属Vtuberの企画内容まで把握・干渉することは無い)


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↑今回の件で急遽弁解の生放送をすることになったupd8所属Vtuberの「ふくやマスター」。無関係なのにとても不憫。

 

ケリンの1つ目のミスは、このような「ややこしい立場に自ら足を踏み入れてしまった」事です。

2つ目のミスは、「自分のスタイルを見誤った」事です。

ケリンは以前から危ないネタや時事ネタを風刺するような動画を投稿しており、これは彼のメインコンテンツでした。

ケリンが動画中で爆破したりミサイルを撃ったりする相手は、不祥事を起こしたり犯罪を犯した人達ばかりでした。

彼らは世間の多くの人から疎まれる存在であり、いわばケリンは世論の代弁者だったと言えます。

「ケリンは悪いやつを爆破してくれる」

…そんな印象が、視聴者の中で自然と作られていたかもしれません。

しかし、今回彼がコラボしたのは「悪いやつ」というイメージを抱く人が多い鳴神でした。

今までのケリンのスタイルと食い違うようなコラボ相手に違和感を感じるファンも多く、結果的に批判が集まってしまったのでしょう。

風刺にはバランス感覚が欠かせません。

ケリンはこれまで、そのバランスを上手く見極めて活動してきただけに、この判断はミスだったと言えます。

3つ目は、「エルフのえるさんを動画に巻き込んだ」事です。

ケリンは前述の通り「エルフのえる」さんのファンであると初期から公言しており、ぎこちないながらもTwitterで会話する等、所謂「てぇてぇ」と言えるような関係にありました。

2人が一緒に並んでいる素敵なファンアートも多く存在します。

昨年のいくつかのコラボ動画では、えるさんが録り下ろしボイスを提供するなど、とても良好な関係だったと言えます。

しかし今回、事もあろうに鳴神とのコラボ動画の中でえるさんの名前を出してしまったのです。

この件はとてもリスキーなものです。

鳴神は以前、にじさんじグループの機密情報を「内部からのリークによって知った」と語っていました。

その真偽は闇の中ですが、「リークを受けていると主張する鳴神とのコラボで、ケリンがえるさんの名前を出す」事により、鳴神とケリンとえるさんが間接的に裏で繋がっているのではないか何か秘密の情報を漏らしているのではないか、というとんでもない誤解を生みかねないのです。

既にこのような荒唐無稽な主張をしている人も少数ながら存在します。

これに対して怒っているえるさんのファンも私は実際に見かけました。

もうここまで来てしまうと、「ラップバトル動画を純粋に評価するべき」とか「コラボは自由」とかいうレベルでは無くなります。

(このコラボをスポーツの日韓戦に例えて擁護している人もいましたが、鳴神を韓国に例えるというのは韓国の人に対して失礼です。)

ケリンは鳴神の活動内容を知っていたようですし、このように他者へ飛び火してしまう事態も予め予測しておくべきでした。

えるさんのファンなら尚更です。

私も以前からケリンとえるさんの絡みを微笑ましく見ていたので、今回1番ショックだったのもこの点です。

最悪の場合、前述したいわなが氏を含め、ケリンがこれまでにじさんじグループやその他の関係先と築き上げてきた良好な関係が崩れる危険性もありました。

周囲の関係者への配慮不足も、今回の炎上の一因だったと言えます。

ケリンの判断

焦ってファンのTwitterをブロックしてしまうなど、一時はかなり動揺していたケリンですが、今日(2020/1/14)になって今回の件への謝罪動画を投稿し、「鳴神との今後一切の関係断絶」を宣言しました。

非常に迅速な対応でした。

ケリン自身が今後の活動に及ぼす影響を考えて下した結論であり、私も正しい選択だと思います。

上記のような最悪のシナリオは避けられました。

企業勢であっても対応にモタつく事がある中で、個人勢であるケリンがこのような素早い行動をとった事は賞賛されるべきです。

しかし、このケリンのツイートへのリプライを見て、私はまた別の問題に気が付きました。

視聴者にこそリテラシーが求められている

今回の件への反応の中でも非常に多く見られた意見は、「なんでこんなに荒れてるの?ケリンは悪くない!ただラップバトルしただけじゃん」というものでした。

ファンとしては当然の反応です。

しかし、上に書いたような鳴神とケリンの置かれている立場や数々のバックボーンを知っているなら、反応はまた別のものになってくるでしょう。

「彼に機密情報等、一切の情報提供などはしておりません。」という謝罪文がケリンから出ている時点で、どう考えても普通の事態ではないのです。

他にも「そりゃ燃えるよ、アイツと関わったら…」という反応も多く見られました。

これは恐らく鳴神のこれまでの行為を知っている人の反応でしょう。

前者と後者の認識の差はなぜ生まれるのでしょうか?

それは、「知っているか知っていないか」の違い、つまり知識の違いです。

「なんでコラボしただけで荒れてるの?」と疑問に思ったのなら、まずその点についてよく調べるべきなのです。

そして調べた情報をよく整理し、正しい結論を導く必要があります。

リテラシー - Wikipedia

これこそが、より良いファン・視聴者になるための鍵と言えます。

鳴神のような間違いだらけのゴシップ屋が支持を得てしまうのも、自分でリサーチして判断する人が少ないからです。

 


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↑こういう人もいます。

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「なんかよくわからないけど○○は悪くないよ!どうせアンチのせいで謝ってるんでしょ?そんなの無視しなよ!」

炎上したYoutuberの謝罪に、必ずと言っていいほど寄せられるコメントです。

こういった態度は、一見すると「炎上した人に優しい」ものに映るかもしれません。

しかし実際は、炎上した人の判断力を鈍らせ、良くない方向に無意識に誘導してしまっているのです。

クリエイターとして活動を続ける人なら誰でも、必ずネガティブな評価にぶつかります。

これらは当人にとっては辛いものであり、障壁に感じますが、全てのネガティブな評価が役に立たないわけではありません。

クリエイター本人が気が付かなかったような問題点や、方針のブレを指摘してくれている事も時にはあるのです。

クリエイターはこれらの意見を取捨選択し、自分の活動の発展に役立てていきます。

しかし、人はどうしても甘い言葉を欲してしまうものです。

厳しい評価に目を背け続け、先程例に出したような「一見すると優しい」意見ばかりに気を取られてそれに身を委ねてしまうなら、気がつけば自分の目指す目標から全くかけ離れていたという事になりかねません。

このようなクリエイターはこれまで無数にいました。

そして、「君は悪くないよ」「自由にやりなよ」と言っていたファンも、「なんだかこの人最初に思ってたのと変わってきたな」と思えば、何時でもフラリと離れていってしまいます。

ファンとは気まぐれで無責任なものなのです。

クリエイターだけでなく、当事者である私たちファンや視聴者も、常にこの事を念頭に置いている必要があります。

決して「全肯定」ばかりが正しい応援の方法ではありません。

逆に、独りよがりに厳しい言葉をかけるようなことも論外です。

相手をコントロールしようとすることは視聴者のエゴに他なりません。

時には厳しく、時には優しく、状況に応じてバランスの取れたやり方で応援するべきだと私は考えます。

そして、状況に応じた意見をフィードバックするためには、やはり知識が必要になってくるのです。

 

事実を把握せず、無責任に擁護する人のことを界隈では「ヨクシラナイト/ヨクワカラナイト」と表現するようです。

今回の件を追っていて知りました。

よく知らない/よくわからないのに、ナイト(騎士)気取りで応援することから、この呼び名になったようです。

推しを破滅させる盲目の騎士になりたいとは誰も思わないでしょう。

V界隈に「自分で調べて判断する」という良い習慣が根付くことを、私は願っています。