頭の中の小さな引き出し

思ったことを書きます。たぶんほとんど更新しません。

ぽこピーの活動の変遷から考える、Vtuberシーンの変化と2人のこれから

どうも、「刀ピーOverdose」の激バズりに乗っかってTwitter「千バズ」を経験してしまい、若干困惑している筆者です。

「刀ピーOverdoseって何?と思われた方はこちらの記事をご覧下さい。

さる2月2日、甲賀流忍者!ぽんぽこさんのyoutubeチャンネル「ぽんぽこちゃんねる」が活動開始から5周年を迎えました。

彼女のチャンネル登録者数は現在40万人を突破しています。

また、そのゲストであり相方でもある「オシャレになりたい!ピーナッツくん」のチャンネルも同日に登録者29万人を突破するなど、「ぽこピー」の2人は2023年に入っても非常に好調です。

しかし、この2人はここまで常に順調に活動してきた訳ではありません。

Vtuber、そしてYoutuberを取り巻く環境は常に変化しており、ぽこピーもそれに合わせて活動を変化させて来ました。

今回の記事ではその活動の変遷、そして2人のこれからについて考察してみたいと思います。

⒈ 創成期(2017年~2018年)

「ぽこピー」というユニットが誕生したのは2018年3月16日です。

そもそも「甲賀流忍者!ぽんぽこ」というVtuberは、2017年から個人制作アニメとして配信されていた「オシャレになりたい!ピーナッツくん」という作品のスピンオフキャラクターとして誕生したものでした。

アニメの主人公であるピーナッツくんと、スピンオフキャラであるぽんぽこ。

2人が初めて邂逅したのがこの日だったのです。

これ以降、ぽんぽこさんのチャンネルに「ゲスト」という形でピーナッツくんが登場するようになります。

このころは1週間に1度ほどの頻度で生配信を行うのが主な活動スタイルでした。

まだ誕生して間もないぽこピーがVtuberの世界で存在感を発揮するキッカケになったのが、2018年5月3日に行われた「ぽんぽこ24」という24時間生放送でした。

このような長時間放送をするVtuberは当時としては非常に珍しく、またゲストとして多数のVtuber個人や企業の垣根を越えて参加したため、異例のコラボとして大きな話題を呼びました。

2018年10月にも再び24時間生配信を成功させ、大きなムーブメントに成長したVtuberの発展に伴い、2人のファンは増えていきました。

実は、2人のこれらの活躍にはYoutubeの仕様」も関係していました。

2017年頃、Youtube「生配信を行っているチャンネルを上位やオススメに表示する」という仕様を取り入れていました。

この仕様により、配信メインに活動していたにじさんじ「アイドル部」「ホロライブ」といったVtuber達が多くのファンを獲得するようになり、界隈が大きく発展しました。

つまり、ぽこピーが武器にしていた「定期生放送」「24時間生放送」というコンテンツは、当時の時流に非常にマッチしていたのです。

⒉ 模索期(2019年~2020年)

2019年1月3日、ぽこピーの2人は動画の毎日投稿を開始すると宣言しました。

Youtuberは、生配信をメインに行う「配信勢」「動画勢」に大別されます。

ぽこピーは、それまでの「配信勢」のスタイルから転身して「動画勢」として活動することを決めたのです。

これは大きな変化でした。

生配信が人気を得ていたVtuberの世界の時流に逆らうような動きに、当時の筆者も不安を感じたのを覚えています。

実際、当初は(今と比べれば)クオリティが低めの動画や再生回数が伸びない動画も多く、2人が苦労している様子が見えました。

同じ時期、HIPHOPをメインに音楽活動を行うユニット「レオタードブタとヤギ・ハイレグ」のアルバムが発表されたり、ABC・NHKなどのテレビにも出演するなど、メディアへの露出が増えていきました。

また、ファン向けのリアルイベントも複数回開催され、グッズを手に入れる機会がそれまでに比べて増えました。

弊ブログによるリアルイベントの現地レポート。

ゆるキャラグランプリの「企業・その他部門」に着ぐるみを制作してエントリーし、2019年はピーナッツくんが、そして2020年はぽんぽこさんが優勝したのも記憶に新しい出来事です。

ゆるキャラグランプリで優勝しても、原宿での知名度は…。

このように列挙してみると、ぽこピーの2人が驚くほど多方面に手を伸ばしていることがわかります。

動画制作、音楽活動、リアルイベント、ゆるキャラ、タレント活動…

「とにかくやれることは片っ端からやってみよう」「チャレンジしてみよう」という2人の意気込みが感じられます。

また、グッズの販売やイベントが増えたことにより、「ぽこピー」という存在が「IP」として強みを持ち始めている点にも注目できます。

当時の2人を取り巻く環境に目を向けると、「企業勢の躍進」「コロナ禍」という2つの大きな変化が浮かび上がってきます。

2018年にVtuberブームが初まった頃、「個人勢(自らキャラクターのマネジメントを行うフリーランスVtuber)」「企業勢(事務所に所属して活動するVtuber)」パワーバランスはさほど大きなものではありませんでした。

しかし、時間が経過して2019年になる頃には、両者の差は大きく開いていました。

配信機材の提供やマネージャーなどのサポートを受けられる企業勢と違い、個人勢は全てを自分で管理する必要があるのですから、後者が不利になるのは必然と言えます。

特に、先程述べた「配信勢」においては企業のVtuber達が圧倒的な強さ(=数字)を持つようになり、個人勢は苦しくなっていきました。

この事を考えると、「配信勢」として企業と需要を食い合うのではなく、動画の毎日投稿やイベントの開催によって独自のファン層を獲得していくスタイルに切り替えたぽこピーの2人の判断は、結果的に正解だったと言えます。

また、2020年初頭から始まったコロナ禍により、Youtubeの視聴者数や視聴時間が大きく増加したことも大きな出来事でした。

これによりVtuber界隈に一種のバブルが発生して全体的に視聴者が増え、ぽこピーもその例に漏れず、さらにファンを獲得していくことになりました。

⒊ 確立期(2021年~)

2021年以降、ぽこピーの活動は安定感を増していきました。

動画の分野ではガチ恋ぽんぽこ」「サウナレビュー」「VRホラー(ピ虐)」「100均」など、好評だったコンテンツがシリーズとして確立されるようになりました。

ガチ恋ぽんぽこ(ぽんぽこの別人格)が過酷なチャレンジをする人気シリーズ。

「サウハラ」が社会問題に発展する日も近い…?

また、グッズの販売がコンスタントに行われるようになり、過去のグッズも再販されて手に入りやすくなったことも、ファンとしては嬉しい変化でした。

ピーナッツくんが個人名義で展開していた音楽活動も軌道に乗り始めます。

2020年の「False Memory Syndrome」に続いて「Tele倶楽部」「Walk Through the Stars」と2つのアルバムが相次いで発表されたほか、日本最大級のHIPHOPフェス「Pop yours」にも出演するなど、活躍の場はさらに広がりました。

また、新型コロナウイルス関連の行動制限が減った2022年の後半には、ファン向けイベント「ぽこピー展」が全国6都市で開催されました。

参加したVtuberさんによるレポート動画。「同業者」も沢山訪れたようです。

この期間の環境の変化として上げられるのは、Youtube収益の減少」です。

コロナバブルにより勢いが止まらないように見えたYoutubeビジネスでしたが、国際情勢の変化や景気の動向により、Youtuber達の広告収益は以前と比べると減ってきています。

実際に日本のトップYoutuberであるHIKAKIN氏も動画内で言及するなど、この問題は深刻になってきています。

当然ぽこピーもこの影響を受けているはずですが、同時並行するようにリアルイベントやグッズ販売などに力を入れており、多少の影響はあったかもしれませんが、一定の収益は確保出来ている可能性があります(あくまで憶測です)。

この点においても、結果的には賢明な判断だったと言えるかもしれません。

ぽこピーのバランス感覚

私が思うぽこピーの最大の強みは、バランス感覚です。

1つのコンテンツに傾倒しすぎるのではなく、バランスよく様々なコンテンツを提供してくれます。

これはとても難しいことです。

私が「一点突破型」と呼んでいるYoutuberの人たちは、1つのコンテンツに注力することでファンを獲得します。

例えるなら「釣り」「虫食い」「音楽」「ゲーム配信」などです。

対して、ぽこピーのような「バラエティ型」のYoutuberは、ゲームやグルメ、音楽、ガジェットなど様々なコンテンツをバランスよく扱わなければなりません。

トレンドにも常に敏感でいなければなりません。

先に挙げたHIKAKINさんもこのタイプですが、「ニワカ過ぎても嫌われ、ディープすぎても付いてこない」という、いわば綱渡りのような活動を行っていると考えると、その苦労は計り知れません。

ぽこピーはこの点で成功していると言えます。

2023年1月27日に投稿された動画「はだかモコピ」がその良い例と言えるかもしれません。

この動画に出てくる「モコピ(mocopi)」とは、ソニーが開発した屋外でも使用可能なモーションキャプチャーです。

2023年1月20日に発売され、防水・軽量・安価とあってVtuber界隈でも話題を呼びました。

動画を見てもらえるとわかりますが、ピーナッツくんの情けない痩せ我慢を見て笑いつつ、モコピの防水性やモーションキャプチャーの精度もわかるという、1粒で2度美味しい構成になっています。

つまり、ライト層向けのネタ動画ガチ勢向けのレビュー動画の要素がそれぞれ混在しているわけです。

この動画はファンに好評を博し、現時点で34万再生を超えています。

確かに、何度も見たくなる面白さがあります。

このように、トレンドを捉えつつも独自性を出し、ともすれば新しいブームに繋がりかねないコンテンツを作り上げる点で、ぽこピーは能力を発揮していると言えます。

TikTok1億回以上再生され、Youtubeでもつい先日1000万再生を超えた「刀ピークリスマスのテーマソング2022」も、似たような側面を持っていると言えるかもしれません。

刀ピークリスマスに関しては、詳しくはこちらの記事を参照してください。

ぽこピーに求められているものとは?

自分で書いておいてなんですが、これは難しい質問です。

多分ぽこピーの2人にも分からないのではないでしょうか。

しかし、私が個人的に抱いている印象から言わせてもらうなら、「手作り感」「アットホーム」という点が挙げられると思います。

ぽんぽこちゃんねるの動画のコメント欄では「兄妹の仲が良くて羨ましい」というようなコメントがよく見られます。

これは、ピーナッツくんのご主人様(中の人)がぽんぽこさんの実の兄(兄ぽこ)である事に起因するコメントです。

この辺りの話は大変込み入っていますので、気になる方は調べてみてください。

つまり、一部の視聴者は2人の「アットホーム感」を楽しみに動画を見ていることがわかります。

確かに、「はだかモコピ」の動画などを見ていると「家族で何やってんだ」という微笑ましい感情が生まれてきます。

私は「はだかモコピ」を初めて視聴した時、HIKAKINさんの人気動画「お正月ダイブ」を思い出しました。

毎年恒例、冬の風物詩。

そういえばこの動画内でも、HIKAKINさんは実の兄であるSEIKINさんと雪の中で戯れています。

つまり、このような「ファミリー」「アットホーム」という路線には一定の需要が存在することがわかります。

また、ぽこピー展では2人が制作した手作り感溢れる展示壁新聞が好評でしたが、このような「手作り感」もぽこピーを語る上で大切な要素と言えます。

ぽこピー展で書き下ろされた壁新聞。

「ファミリー」であるぽこピーが「アットホーム」な雰囲気で「手作り感」を失わずに活動してくれること、これこそが視聴者が求めているものなのかもしれません。

私たちのような素人は、

「なぜぽこピーは伸びてきたのにスタッフを雇わないんだろう?」

「起業するべきなのでは?」

と短絡的に考えてしまいがちですが、視聴者はそのようなお金の匂いや人の動きに意外と敏感です。

お金を使う企画で「変わっちまったな…」というコメントが付くのは、Youtuberを追っている人ならあるあるネタとして理解できるかもしれません。

ぽこピーはそのような雰囲気を極力出さず、あくまで2人のペースを保ちながら活動しています。

これは、視聴者が配信者に親近感を抱き、その活動に「心の歩調」を合わせていく上で、非常に大切なポイントと言えます。

ライフワークとしてのVtuber

Vtuberブームの始まりから5年以上が経過した今、この界隈は大きく様変わりしてきています。

100万人単位の登録者を抱えるVtuberが増え、視聴者の性別や国籍も多様化しています。

デビューする人もいれば、引退する人もいます。

この不安定とも言える世界の中で、個人的に気になっているのが「ライフワークとしてVtuber活動をしている(と思われる)」クリエイターの存在です。

かねてより私はVtuberとはアバターの一種である」と考えていました。

単なるキャラクター文化ではなく、才能を持つクリエイターが、能力を発揮したり新たな活動にチャレンジするための"機会"を創造する文化だと捉えています。

現在活躍しているVtuberの中にも、そのような活動形態を取っている人がいます。

月ノ美兎さんはバーチャルライバーグループにじさんじに所属している所謂「企業勢」ですが、ネットやサブカルに造詣の深い本人の趣味を活かし、「シモ・エモ・奇妙」の三拍子揃った活動スタイルを確立。

他とは一線を画す存在感を放っています。


秘宝館レポート配信(シモ)。

まるでアイドルのようなダンスと歌の配信(エモ)。

珍スポット探訪動画(奇妙)。

最近では日本全国を巡って珍妙なスポットを探訪したい、という壮大な野望を語っており、彼女の活動はまだまだ続いていきそうです。

その活動スタイルは、今では少しづつ廃れつつある"ブロガー"に通じるものがあります。

  • さえきやひろ

マルチクリエイターVtuberとしてフリーランスで活動するさえきやひろさんは、企業や個人からの2D・3Dモデルの制作依頼を請け負いつつ、イラストや楽曲・動画制作、配信など様々な創作活動を行っています。

作詞・作曲を担当しているのは「ONEPIECE FILM RED」にも楽曲を提供した「FAKE TYPE」。

「ものづくりVtuberを自称し、「さえきやひろ」という自分自身さえも作品の一つとして活動する彼女は、まさに"クリエイターのど真ん中"を往く存在と言えます。

  • 社築

月ノ美兎さんと同じく「にじさんじ」に所属する男性ライバーである彼は、自他共に認めるオタクVtuber

プログラマーという経歴を活かし、ディープな知識をゲームで活かしたかと思えば、音ゲーガチ勢として「プロジェクトセカイ」の案件を貰うなど、「好きなことで生きていく」というオタクの夢を体現したような存在です。

プログラマーらしい視点で語ってくれます。

プロジェクトセカイの案件動画。

私は、このような「自分のペースを貫く活動スタイル」こそ、Vtuberの究極なのではないかと思っています。

筆者もオタクなのでそれなりに長くネットを見てきましたが、登録者100万人などを目標に掲げてがむしゃらに活動したあと、急激にフェードアウトして休止してしまった配信者を沢山知っています。

原因は様々ですが、多くは目標を失ったりモチベーションが低下したことが理由でした。

2023年1月23日に引退を表明した車いすテニスの最強選手・国枝慎吾さんも、強すぎた故にモチベーションの低下に悩まされたそうです。

どんなに優れた能力を持つ人でも、目標を失って燃え尽きてしまえば、活動を続けることはできません。

2022年12月24日にぽんぽこちゃんねるに投稿された動画の中で、ぽんぽこさんは「動画に対して熱くなりすぎていたと思った」「考えが変わってイベントを増やした」と語っています。

その一方で、「ずっと業界の中でギラギラしている」とも語っていました。

2人の貴重な本音が聴けます。

これらは一見すると相反する意見のようですが、「熱意を失わずにモチベーションを保つため、気持ちを切り替えた」という意味の発言だったようです。

いずれにせよ、クリエイターとして抱える矛盾を消化していく上で、非常にリアルな心境が吐露されていると感じました。

先日行われたぽんぽこちゃんねるの5周年記念生放送では、何度か「10年後もやろう」という言葉が出てきました。

モコピクイズ、デカキン師匠との号泣対談など盛り沢山の配信でした。

ファンとしては、この言葉はとてもうれしいものでした。

ぽこピーは常にやりたいことや目標を見つけながら活動しています。

まさにライフワークとしてのVtuber活動と言えます。

今後、困難なことや大変な変化が2人を待ち受けているかもしれませんが、ぽこピーの2人は必ずそれを乗り越え、新しい光景を見せてくれるはずです。

私はそう信じてやみません。

【朗報】刀ピー、バズりまくる【V界の不思議】

どうも半年ぶりです、筆者です。

今、緊急でこの記事を書いています。

「2022年はみなさんにとってどんな年でしたか?」とか最初の挨拶を考えていたのですが辞めました。

それどころではありません。

刀ピーが、バズり倒しています。

もう一度言います。

刀ピーが、バズり倒しているのです。

そもそも刀ピーって?

「刀ピー」とは、バーチャルライバーグループ「にじさんじ」に所属している男子高校生「剣持刀也」くんと、アニメ・音楽などマルチに活動しているキャラクター「オシャレになりたい!ピーナッツくん」がコラボした際に生まれたカップリングのことです。

この2人はコラボする頻度がかなり低く、今年は24時間生放送企画の「ぽんぽこ24」と、先日12月25日に配信された「刀ピークリスマス2022」の2回しかありませんでした。

この点だけを見ると、「刀ピー」はマイナーなコンビのように思えます。

この刀ピーが今、バズりにバズっているのです。

どれくらいバズったのか

まず、こちらの画像をご覧ください。(ニンダイ)

こちらはVtuberライブ配信についてのデータを集計して公開している「VSTATS」さんのページです。

「刀ピークリスマス2022」の最大同時視聴者数は12万5756人となっています。

これはとんでもない数字です。

VSTATSさんのランキングによれば、2022年12月25日に行われたVtuberの配信のうち、最も視聴者数が多かったのは「刀ピークリスマス2022」でした。

2位の配信の同時視聴者は8万8101人で、その差は4万人弱。

クリスマスは一大イベントですから、他のVtuberさん達も気合を入れて配信を行います。

その激戦区の中で、刀ピークリスマスは最も多くの人に見られていたのです。

また、毎年恒例となっているピーナッツくんが剣持くんに贈るラブソング(!?)「刀ピークリスマスのテーマソング」は、YouTubeにMVが投稿されると凄まじい勢いで再生数を伸ばし、投稿からわずか27時間で100万再生を突破。

YouTubeの急上昇ランキングでは最大で2位まで浮上し、投稿から4日経った12月30日現在、再生回数は250万回を超えています。

▲1位がSnowMan、2位が刀ピークリスマスのテーマソング。ほんとに?なんかスクショの画質も悪いし…夢でも見てた?

Twitterでは「刀ピークリスマス」「刀ピーOverdose(テーマソング内のフレーズ)といった単語がいくつもトレンドに入り、半日以上居座り続けました。

さらに、若者に人気のSNSであるTikTokで「刀ピークリスマス2022」と検索してみると、「刀ピークリスマスのテーマソング」の踊ってみた・弾いてみた動画がいくつも出てきます。

動画のいいね数も1k(1000)を超えているものが多く、たくさんの人が視聴していることがわかります。

まさに「バズ」です。

あらゆるSNSで「刀ピー」が猛威を振るったのです。

大バズりへの歴史

刀ピークリスマスは歴史のあるイベントです。

2018年に初回放送があって以来、2022年まで毎年、5年間継続しているイベントです。

Vtuberという配信スタイルが花開いたのが2018年ですから、もはや年中行事風物詩と言ってもいいイベントになってきています。

この「刀ピークリスマス」は2021年、大きな転換点を迎えました。

詳しくは当ブログのこちらの記事をご覧下さい。

なにはともあれ「刀ピー」は2021年のクリスマスをキッカケに大きくファンを増やしましたが、それ以降のコラボは、前述のようにわずか2回しかありませんでした。

私はこの点について心配していました。

「新規ファンは増えたけど、その後の供給が少ないんだよな…ファンが減ってしまったんじゃないか?」と。

養分が少なければ花は枯れてしまうのではないか…と思ったのです。

しかし、この心配は完全に杞憂でした。

雨の少ない荒地に咲く花のように、刀ピーファンたちはスクスクと育っていたのです。

Twitterで「刀ピー」と検索すると、ファン同士がお互いに声をかけあってコンテンツを盛り上げている様子が観測できます。 (勝手に見てんじゃねーよ!と思われた方、ごめんなさい。)

「今年の配信見た?」

「曲だけでも聴いて!ウケるから!」

「(テーマソングが)気持ち悪い歌詞なのに耳から離れないww」

私はここに「クチコミ」の真髄を見ました。

親しい人からオススメされるから、見てみようという気になる。

興味を持って調べてると、ファンの呟きが目に入る→さらに興味がわく。

ああ、この「評判の連鎖」こそが"バズ"なのだ。

広告やCMによって作られたブームではなく、既存のファンが新たなファンに1つ1つバトンを繋いでいくことで、大きなうねりが出来ていくのです。

コンテンツの人気が育っていくのをリアルタイムで見ることができるという、とても貴重な体験でした。

刀ピーはなぜ人々を惹き付けるのか

筆者は困惑した。

必ず、かの摩訶不思議な刀ピーの魅力を調べねばならぬと決意した。

筆者には刀ピーがわからぬ。

正直、私にはなぜ刀ピーがここまで人気を獲得したのかがわかりません。

ピーナッツくんを5年間追い続けていますが、わからないのです。

たぶん剣持刀也くんやピーナッツくん本人も分かっていない気がします。

ただ、これだとさすがにオチがつかないので、私なりに考察してみたいと思います。

①マスコット×主人公っぽい関係性がウケているんだよ説

個人的に推したい説です。

古今東西、様々な漫画やアニメで「マスコットキャラ」が登場してきました。

ピーナッツくんはまさにそのようなキャラと言えます。

異世界から来たような特徴的な体型、ビビッドカラーの体色、ダミ声、トリッキーな発言…。

「カワイイ」よりは「不思議」「キモカワ」に分類されます。

一方の剣持刀也くんは、リアルにも普通にいそうな外見で、発言も(一部を除いて)常識人然としています。

まさに「主人公」のような存在です。

この2人の組み合わせは、ドラえもんオバQのような古典的、かつ王道なものと言えるでしょう。

ピーナッツくんがボケ剣持くんがツッコミという構図もいかにもマンガ的で、見ていて非常に安心感があります。

②「刀ピークリスマスのテーマソング」がウケているんだよ説

説というか…事実ですね。

ピーナッツくんにはラッパーとしての顔もあり、既に3枚のアルバムを発表。

今夏にはライブツアーも行うなど、本格的にアーティストとして活躍しています。

刀ピークリスマスのテーマソングは、そんなアーティストでもあるピーナッツくんが、愛してやまない剣持刀也くんのために(本人曰く、刀也くん1人のために)制作した楽曲です。

キャッチーなメロディにのせて情熱的かつ変態的な歌詞が流れるため、非常に中毒性があり、コアな人気を博しています。

また、歌詞には時事ネタ掛詞などが隠されており、オタクの大好きな考察要素も豊富です。

人気が出るのはある意味当然と言えるかもしれません。

③BLっぽい関係性がウケているんだよ説

筆者はあまりBLに詳しくないので深い部分まで言及はしませんが、ピーナッツくんと剣持刀也くんの2人の関係性はBL的な文脈で捉えられることがあります。

これがウケているというわけです。

刀ピーの場合、ピーナッツくんが積極的に剣持くんにアプローチし、剣持くんがすぐさま否定する、という構図がお約束になっています。

しかし、配信の裏では普通にお泊まりしたりサウナに行ったりするなど、剣持くんも満更でもない感じがあり、これがファンの心を乱す要因になっています。

また、今年のテーマソングでは、前年までとは違ってダーティ&アダルティなピーナッツくんの感情が綴られていたこともあり、ファンの考察がますます捗る…という事態に発展しています。

※(なお、ピーナッツくんは性別がピーナッツなので男ではない可能性があります)

④「兄ぽこ」の存在が深みを持たせているんだよ説

めちゃくちゃコアな説です。

「兄ぽこ」とはピーナッツくんに声を当てている人物であり、言うなればピーナッツくんというキャラクターのプロデューサー。

兄ぽこはなぜピーナッツくんにこのような言動を取らせているのか?

なぜ刀ピーをここまで続けているのか?

何を思ってテーマソングを作っているのか?

そして、兄ぽこにとって剣持くんは本当はどんな存在なのか?

こんな事を考えているうちに、刀ピーファンの夜は更けていくのです…。

まとめ

今回の記事では、刀ピーが大バズりしていること、そしてなぜ刀ピーが人気になったのかを取り上げました。

刀ピーはかなり自由なコンテンツです。

刀ピークリスマスの配信はほとんど台本や打ち合わせ無しで行っているそうです。(本人たちが語っています)

供給が少ない=概念が公式によって固定されていないため、ファンの想像次第で様々な二次創作やファンアートを生み出すことが出来ます。

原作(本人たち)がコミカルな関係であるため、ガチにもギャグにも振ることが出来ます。

このあたりのユルさが人気の秘訣なのかもしれません。

2022年は剣持くんにとってもピーナッツくんにとっても、そして勿論「刀ピー」にとっても飛躍の1年となりました。

来年のクリスマス、2人はどのような姿を見せてくれるのでしょうか。

今からとても楽しみです。

「刀ピークリスマス2021」はピーナッツくんに何をもたらしたか

今日からちょうど半年前の2021年12月25日、1本のMVがyoutubeに投稿されました。

その動画のタイトルは「刀ピークリスマスのテーマソング2021/ピーナッツくん」

このMVは驚異的な伸びを見せ、現在の再生回数はなんと487万回を超えています。

また、このMVの初出となった配信「刀ピークリスマス2021」のアーカイブ88万回以上再生されています。

なぜ、このような事態が起きたのでしょうか。

また、「刀ピークリスマス」はピーナッツくんの活動にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。

刀ピークリスマスとは?

そもそも「刀ピークリスマス」とはどのようなイベントなのか、改めておさらいしてみましょう。

にじさんじ所属の人気男性ライバー「剣持刀也」くんと、「ピーナッツくん」がコラボする配信で、2018年12月25日以来毎年クリスマスに行われています。

剣持くんと親密になりたいピーナッツくんが彼の家に押しかけ、ドタバタを繰り広げるというコメディ的な企画です。

基本的にネタを準備してくるのはピーナッツくんで、剣持くんはボケにツッコミつつピーナッツくんの求愛(!?)を受け流す、という立ち位置になっています。

「刀ピー」という謎カップリングもピーナッツくんの発案です。

甲賀流忍者ぽんぽこさんとピーナッツくん(所謂「ぽこピー」)を追っている人で、このコンテンツを知らない人は居ないと言っても過言ではないほど毎年恒例の企画となっています。

刀ピークリスマスソングとは?

刀ピークリスマスソングとは、「刀ピークリスマス」の企画内でピーナッツくんが剣持くんにプレゼントとして贈る楽曲です。

基本的に剣持くんへの愛が歌われており、なかなかに情熱的、そして変態的な内容となっています。

ピーナッツくんが得意とするラップの要素を取り入れつつ、ポップで中毒性のあるキャッチーなメロディが特徴です。

2019年の2曲目からは、配信とは別にMVとしても公開されるようになりました。

これまで公開された3本のMVの合計再生回数は790万回を超え、純粋な音楽としても人気を博しています。

「特別」だった刀ピークリスマス2021

既に書いたように、刀ピークリスマスは4年間毎年行われている企画です。

しかし、「刀ピークリスマス2021」はアーカイブの再生回数もMVの再生回数も他の年に比べて明らかに多くなっています。

この「人気爆発」とも言える現象はどういうことなのでしょうか。

この謎を読み解くヒントは、Vtuberシーンを取り巻く環境の変化にあります。

2018年にVtuberブームが始まって以降、長らくこの業界は男性視聴者が極めて多い傾向にありました。

面白さや可愛さを売りにした女性Vtuberや女性ライバーがたくさんデビューし、彼女たちを応援する男性ファンが増える中で、男性Vtuberは中々伸びにくい状況が続いていました。

当初「四天王」と呼ばれていた大手Vtuber5人が全て女性的な外見だったことからも、その傾向の一端が垣間見えるでしょう。 (注※キズナアイさんはAIなので性別無し、ねこますさんはバ美肉おじさん)

しかし、Vtuber業界の拡大とともに、視聴者の国籍や年齢層・性別は多様なものとなっていきました。

2020年頃からは女性ファンが徐々に増加し、男性Vtuberも活躍の場が広がり始めました。

特に「にじさんじ」は初期メンバーから男性ライバーを投入するなど、男女ともにバラエティ豊かなグループ構成を行っており、Vtuber業界における女性ファンの増加に貢献したのではないかと(個人的に)思っています。

にじさんじ×タワレコのコラボ告知。イケメンライバーがズラリ。

にじさんじユーザについてのデータをまとめたツイート。officialストアやファンクラブに登録しているユーザの比率では既に女性が男性を上回っている(1枚目)。

最近では「叶」さんや「葛葉」さんのような100万人以上の登録者を抱える男性ライバーも現れるようになりました。

▲この2人は「ChroNoiR」というユニットも組んでいます。

他グループもこの動きに追随したことで、現在では性別に関わりなく、まさに老若男女が自分の"推し"を見つけられるようになっています。

「刀ピー」の"刀"こと剣持刀也くんも例外ではありません。

デビュー時から面白いイケメンとして男女関わりなく人気でしたが、右肩上がりに人気が上昇し、特に2021年は前年の2倍近いペースでチャンネル登録者が増加するなど大活躍しました。

▲分析サイト「socialblade」より。剣持刀也くんの躍進がわかります。

https://socialblade.com/youtube/channel/UCv1fFr156jc65EMiLbaLImw

2021年10月21日には、人気男性ライバー4人によるユニット「ROF-MAO」のメンバーとしても活動するようになり、女性ファンはもちろんのこと、業界からの注目度もますます高まっています。

これらのタイムラインを考慮すると、剣持くんを含めた男性Vtuberへの注目度がグングン高まってきているタイミングで「刀ピークリスマス2021」が開催された、ということがわかります。

これは決して意図的なものではないでしょう。

クリスマスの日時は変わらないからです。

まさに偶然のイタズラ

様々な要素が重なったことによって、刀ピー、そしてピーナッツくんは世間に「発見」されることになります。

刀ピークリスマス2021の成功

刀ピークリスマス2021が告知された時、実は私は不安でした。

刀ピークリスマスは既に3回行われており、率直に言えばマンネリ感が否めなかったからです。

ピーナッツくんが剣持くんに言い寄る(笑)展開はこの企画のキモですが、回を重ねるうちに食傷気味になってきており「もう4回目だけど大丈夫?」という気持ちでした。

しかし、蓋を開けてみればこの配信は私の期待を大きく上回るものでした。

よく準備されたピーナッツくんの紙芝居漫談、サウナで築いた人脈を生かしたサプライズ展開、相変わらずクオリティの高いクリスマスソングなどなど…。

どれをとっても過去1番と言っていい仕上がりだったのです。

配信は同時接続者数が最大で3万人以上(前年の3倍近く)に達するなど非常に注目されており、ここでスベってしまえば刀ピーというカップリングが危機に陥るかもしれない状況でしたが、その大舞台でピーナッツくんはしっかり結果を残しました。

配信終了後のツイッターでは「初めての刀ピークリスマスリアタイでした!」と語る視聴者が沢山見られました。

▲刀ピークリスマス初リアタイを喜ぶ人、リアタイを逃して悔しがる人…悲喜こもごもの12月26日。

この人たちはきっと不思議に思っていたでしょう。

「今年からファンになった剣持刀也くん…彼がわざわざ毎年クリスマスに予定を開けてコラボする、この黄色いクリーチャーは一体何者なんだ?」

と。

あるいは既に"予習"して、刀ピークリスマスソングを楽しみにしていた人もいたかもしれません。

実は、前年の「刀ピークリスマスのテーマソング2020」のMVが、2021年のクリスマス以前に100万再生を突破していたのです。

これはまさに、''刀ピー爆発"の前兆とも言える現象でした。

刀ピークリスマス2021の配信内容と楽曲のクオリティは、高まった視聴者の期待に十分答えるものでした。

配信後にピーナッツくんのチャンネル登録者が一気に増えたことがそれを裏付けています。

またこれ以降、Twitterで「ピーナッツくん」や「刀ピー」といった単語が呟かれる頻度はそれ以前に比べて明らかに高くなっており、アクティブなファン層の獲得に成功したことがわかります。

MV「刀ピークリスマスのテーマソング2021」は投稿からわずか11日で100万再生を突破し、釣られて前年のクリスマスソングも200万再生に到達するなど、ピーナッツくんの周囲はにわかに活気づきました。

刀ピークリスマスの功罪

ピーナッツくんのその後の発言を鑑みると、刀ピークリスマスソングの爆発的な再生回数は本人にとって予想外だったようです。

しかし、彼はこのチャンスを逃しませんでした。

クリスマスの興奮冷めやらぬ2022年2月4日、XRライブ「ONAKAnoNAKA」が告知されます。

これは全編無料で開催されたクオリティの高いバーチャルライブであり、新たにピーナッツくんのファンになった人達に彼の"アーティスト"としての一面を強く印象づけるイベントでした。

youtubeで無料公開されたこのライブは、最大同接1万7000人以上を集め、Twitterハッシュタグでもトレンド1位を獲得するなど大成功を納めました。

このライブ以降、刀ピークリスマスソングだけでなくピーナッツくんのオリジナル楽曲MVの再生回数も伸び始めます。

Vtuberとしてだけでなく、アーティストとしてのファンも増えたことがわかるでしょう。

ピーナッツくんの快進撃はまだ続きます。

5月8日には「グミ超うめぇ」 のMVがオリジナル楽曲として初めて100万再生を突破しました。

5月21日には幕張メッセで行われた日本最大級のHIPHOPフェス「POPYOURS」に出演。

その影響でSpotifyの国内バイラルチャート5位に「グミ超うめぇ」がランクインするなど、ピーナッツくんの楽曲が本格的に評価され始めたのです。

今月初めには3rdアルバム「Walk Through the Stars」もリリースされました。

アルバムの感想記事はこちら▼

ピーナッツくんの3rdアルバム「Walk Through The Stars」#ウォクスタ を聴いた感想 - 頭の中の小さな引き出し

▲Walk Through The Starsはダウンロードチャートで週間4位にランクインしました。

一連の流れを見ると、

①刀ピークリスマスによって新規視聴者を獲得

②XRライブによって新規視聴者を音楽に惹き付ける

③MVの再生数やアーティストとしての評価が上がる

④大舞台でさらに実績を残す

というように、刀ピークリスマス2021を起点にして大きな波が出来ていることがわかります。

もちろん、XRライブやアルバムなどはクリスマス以前から企画されていたはずです。

様々な要因が重なった「偶然のイタズラ」だったわけですが、結果的に好循環が発生しているのです。

刀ピークリスマスのテーマソング2021のMVは動画時間が3分未満と短く、それでいてメロディや歌詞には中毒性があるので「ピーナッツくん入門編」として非常に有効です。

中毒性のある動画や音楽を「電子ドラッグ」と形容することがありますが、刀ピークリスマスのテーマソング2021はいわばゲートウェイドラッグ」なのです。

実際に

「友達から教えてもらったけどハマって抜け出せない、助けて」

という声を非常に多く見ることができます。(警察の啓発ポスターかな?)

「刀ピーでピーナッツくん知ったけど、普通に良い曲作るじゃん」

という感想も見られます。

このように、ピーナッツくんの活動において「刀ピークリスマスのテーマソング2021」はひとつのターニングポイントとも言える作品でした。

無料ライブ「ONAKAnoNAKA」でこの曲をセットリストに含めたのは、ピーナッツくん本人がそれをよく理解していたからでしょう。

しかし。

強い薬には必ず副作用が存在するように、刀ピークリスマスソングにも一定の副作用が存在します。

この副見出しを「功罪」としたのはそのためです。

まず第1に、

「刀ピークリスマスソングは知っているけどピーナッツくんの他のコンテンツは見た事がない」

「ピーナッツくんを浅く知っている」

という視聴者層が増えたことです。

これは一見良い事のように思えます。

しかし、こういう人の中では「ピーナッツくんは刀ピーの人」というイメージで固定されてしまい、彼のショートアニメやぽんぽこちゃんねるでの活動までは食指が伸びにくくなる可能性があります。

「ピーナッツくん?あぁ、刀ピーの人ね(笑)」

頼む!もう一歩踏み込んでくれ!

尤も、これは今後の伸び代としてポジティブに捉えることもできます。

第2に、

「ピーナッツくんの音楽活動の代表作が刀ピークリスマスソングだと思われてしまう」

という点が挙げられます。

確かに刀ピークリスマスソングは素晴らしい曲ですし、私も今でも週に何度か聞き返すほど大好きです。

しかし、ピーナッツくん本人が「あの曲の歌詞は1時間で考えた」と語るように、彼にとってあの曲はあくまでラフな気持ちで、剣持くん個人に向けて作った曲なのです。

壮大な身内ネタとも言えます。

つまり「刀ピークリスマスソング」は"Vtuberとしてのピーナッツくんの作品"なのです。

アーティストとしてのピーナッツくんには、他に評価されるべき曲がまだまだ存在します。

MCバトルで有名なラッパー「晋平太」氏がピーナッツくんの曲のリアクションをするという動画が存在します。

この動画内でスタッフさんが刀ピークリスマスソングを晋平太氏に聞かせているのを見て、私は嬉しさもあった半面、なんとも言えない気持ちになっていました。

(本職の人に聞いてもらうのなら、他にも良い曲があるんだけどな…)

(スタッフさん!『笑うピーナッツくん』もお願いします!)

そのような意味では、「グミ超うめぇ」がミリオンを突破したのは個人的に非常に嬉しい出来事でした。

とてもキャッチーな曲で代表作に挙げるにはピッタリですし、数字としての箔もつくからです。

全体的に景気の良いぽこピー

最後に少しマイナスな点を挙げてしまいましたが、刀ピークリスマスソング2021が伸びていることはファンとして素直に嬉しいです。

このペースであれば夢の1000万再生も可能かもしれません。

また、次なる刀ピークリスマスソングへの期待も高まります。

グミ超うめえの100万再生に加えて、ぽんぽこ24vol.6のアーカイブも相次いで100万再生を超えるなど、最近のぽこピーを取り巻くニュースは景気の良いものが多いです。

刀ピークリスマス2021からおよそ1ヶ月後、youtuberの「みの」さんは、自身が投稿した動画の中でピーナッツくんのことを「発見待ち」と表現されていました。

まさに今のピーナッツくんは「発見されかけている」状態と言えるでしょう。

7月からはピーナッツくんのワンマンライブツアーも開始します。

▲渋谷マルイでポップアップストアもOPENするようです。

2022年が、ぽんぽこさんにとっても、そしてピーナッツくんにとっても、さらなる飛躍の年となるのは間違いないでしょう。

ピーナッツくんの3rdアルバム「Walk Through The Stars」#ウォクスタ を聴いた感想

2022年6月1日、Vtuber/ラッパーとして活躍するピーナッツくんの待望の3rdアルバム「Walk Through The Stars」が発売されました。

この記事では、私がこのアルバムを聴いた感想や考察、妄想を書いていきたいと思います。

(筆者の妄想が激しいのでご注意ください。)

アルバム全体が一つの作品に

1stアルバム「False Memory Syndrome」や2ndアルバム「Tele倶楽部」でもそうでしたが、ピーナッツくんのアルバムはただ曲の寄せ集めではなく、全体を通して一連のストーリーが語られる構成になっているように感じられます。

今作「Walk Through The Stars」も同じで、過去作含めた3作の中でも特にその傾向が強い印象を受けました。

私は実の所、ヒップホップ含め音楽にはあまり詳しくありません。

しかし、音楽を聴くことと、曲の歌詞からあれこれ考えるのは大好きです。

アルバムの収録順や全体のテーマを踏まえて歌詞を読んでいくと、ピーナッツくんの考えている事が透けて見えてくるようで、なかなか楽しいです(キモ・オタク)。

以下にそれぞれの曲から見えてくるストーリーを書いていきたいと思います。

1.Roomrunner

ピーナッツくんは「ぽんぽこちゃんねる」で投稿された動画の中で、罰ゲームとして1日6000歩をウォーキングしなければならないというノルマを課されてしまっています。

屋外を歩くだけでは大変なので、室内でもノルマをクリアできるようにルームランナーを購入しました。

この曲のタイトルはそれに由来していると考えられます。

歌詞には

「Wake up in the morning」

「On a treadmill I do ride that まるで魔法のカーペット 原動力は僕の足なんです」

という箇所があり、朝に目覚めたピーナッツくんがルームランナーでランニングをこなしているという日常風景が浮かんできます。

「仮想的なスピードラン」という意味で「エアライダー(カービィのエアライド)」と「シティトライアル(エアライドの中のゲームモード)」というゲームに由来する単語が引用されています。

こちらはバイク用語とのダブルミーニングになっており、言葉遊びも面白い1曲です。

2.Fulltracker

ピーナッツくんのVtuberとしての活動内容の一端が垣間見える曲です。

フルトラッキング、つまり3Dモデルを使った動画を撮影する時の様子が歌われており、

GANTZに呼ばれたみたいなmybody」

という歌詞が面白いです。

画像検索してみるとわかりますが、モーションキャプチャーに使われるトラッキングスーツとGANTZスーツはそっくりなのです。

「6点つけて動くVIVE

東京Studio行って動くVICON

OculusならQuest2 & Go

valve index めっちゃハイコスト」

など、撮影用機材の名前がたくさん出てきます。

3.Makeup

筆者お気に入りの曲。

ピーナッツくんが自分の姿をさらに「オシャレ」にするためにメークアップ=装い飾ろうとしている曲です。

他の方の感想でなるほどと思ったのは、

「鏡の中に映った ぼくをまとめて Make up!」

という歌詞は「兄ぽこの視点で画面に映るピーナッツくんを見たもの」である、という考察です。

ピーナッツくんには2D・3Dを含め多くのモデルがありますから、それらをよりオシャレに磨いていこう、というピーナッツくんのご主人様=兄ぽこの意欲が感じられるような気がします。

「Made in さえき それにheart in

これぞまさに これぞまさにって」

という歌詞からは、現在使用している3Dモデルの製作者である「さえきやひろ」さんとモデルへの並々ならぬ想いが感じられます。

4.KidsRoomMen

タイトルそのままズバリ、「子供部屋おじさん(所謂"こどおじ")」の曲。

ピーナッツくんは自分のホームは原宿だと言い張っているので、この歌は現在も滋賀の実家に住みながら活動する「兄ぽこ」の視点が多く含まれていると推測できます。

「おもちゃ箱みたいな居場所 たまには外に出なきゃだろ」

「まだ振り出しにいる ゴールはここにある」

という歌詞からは、現状に対する複雑な葛藤が滲み出ています。

しかし、最後の

「この大きくなった影を 包み込む私だけの KidsRoom yey

あの子じゃできないこと やってのけるのさ」

という部分からは、自分はまだまだ滋賀をレペゼントしながら活動していくぞという意気込みも感じられます。

ちなみに筆者も田舎住みのこどおじです。

5.KFC

タイトルを見た時にケンタッキーフライドチキンかな?と思っていたら、本当にケンタッキーフライドチキンの曲でした。

聴いていると「平和堂(滋賀県を中心に展開しているスーパーマーケット)のフードコートでケンタッキーをうめ…うめ…と1人で貪るピーナッツくん」の姿が浮かんできて、笑いを禁じ得ません。

グミの美味しさをひたすら語る「グミ超うめぇ」と対を成すような楽曲となっています。

6.PEEPEE

恐ろしげな読経のサンプリングから始まる本アルバム屈指の「怖い曲」。

タイトルは「ペーペー=素人、技量や経験の劣るもの」に由来していると思われます。

曲中では周囲のレベルの高さやミスマッチ感に引け目と劣等感を感じるピーナッツくんの姿が描かれています。

経験を積み、最近では様々な大舞台に呼ばれることも増えたピーナッツくんですが、その分悩むことも増えたのでしょうか。

「頭の良い人たちいる周り

専門用語なに?知らん また喋ってる」

とあるので、イントロのお経は「素人の自分には難しい専門用語が念仏の様に聞こえる」という意味が込められているのかもしれません。

7.TotaKK

今アルバムの中で個人的に一番難解に感じた曲です。

タイトルはゲーム「どうぶつの森」シリーズに出てくる歌手のキャラクター、「とたけけ」に由来すると思われます。

彼は基本的に夜中に歌を歌うので、自室で楽曲制作を行うピーナッツくん/兄ぽこの曲だと私は解釈しました。

8.Tamiflu(feat.チャンチョ)

今アルバム唯一のフィーチャリング楽曲。

熱に浮かされたチャンチョが彼独特のトーンでしっとり歌いあげます。

熱がある時に見る夢のようなMVも印象的でしたが、アルバムの中で他の曲と通して聴くと「TotaKK」で深夜に楽曲制作をしたピーナッツくん/兄ぽこが根を詰めすぎてしまい、夜中に熱を出してしまったor体調を崩した、というストーリーが見えてくる気がします。

非常に情景的な曲です。

9.respawn

ピーナッツくん/兄ぽこの現在のVtuberシーンへの想いが伝わってくるような楽曲。

「適当なラクガキから ビックリするようなコンビ

僕らロックマンエグゼのように 走って飛び込んだよ till morning」

という歌詞は、ぽんぽことピーナッツくんの「ぽこピー」コンビのことを指しているのでしょう。

morningはVtuberにとっての朝の時代、2018年頃のことを言っているのかもしれません。

この曲は歌詞の一つ一つが重く、現在に至るまでの4年あまりの間にピーナッツくん/兄ぽこが経験してきた様々な思い出が込められているように感じます。

「僕らは行き詰った 想像の中でほぞを噛んだ

もう少し ここに居座るよ まだ

よくわかんない」

という部分は、活動の中で日々感じる葛藤や悩みが伝わってくるようでいたたまれません。

初めこの曲を聴いた時、「ピーナッツくんは活動をまとめに入っているのか?」と少し不安な気持ちになったものです。

しかし、Tamifluと続けて聴くと「夜中に薬を飲んで熱が下がり、ベッドの中でぼんやり物思いにふけるピーナッツくん/兄ぽこ」の姿が脳裏に浮かんできて、勝手に納得してしまいました。

9.Youngpixar

Pixar」とは、元々スペイン語「to make pictures」という意味がある言葉です。

ディズニーに属するピクサーアニメーションスタジオの名前の由来にもなっています。

曲中では、創作活動で悩む兄ぽこの姿を垣間見ることができます。

「まだガレージバンドの中」という歌詞がありますが、ガレージバンドは初心者向けの音楽制作アプリのことです。

昔挑戦した作りかけの曲が、兄ぽこのMacの中にはまだ眠っているのでしょうか?

そしてまたもや

「寝れないやこんな日は」

という歌詞が。

大丈夫?不眠症になってない?

11.Petbottlerocket

今アルバム屈指のキラーチューン。

ここまで数曲続いていた落ち着いたトーン、悪く言えば鬱々とした雰囲気を一気に吹き飛ばす爽快感が素晴らしく、非常にかっこいい曲です。

「LANケーブルが壁を破っては 仮想現実感 over」

この部分とかもう劇場版アニメの主題歌でしょ…。

「KidsRoomより

もっと広い世界を見据えて動いてんだ

ここはopenworld」

という歌詞からは、さらに活躍の場を広げたいという強い意志が見えます。

「かたや現実感を残して 机の中にしまうbadday」

と歌っているように、日々の悩みが完全に吹っ切れている訳では無いでしょう。

しかし、

「ここはopenworld

眺めているよ目下

行きあたるはずさどっか」

と歌うピーナッツくんからは、停滞の雰囲気は少しも感じられません。

12.Walk through the stars

アルバムの表題曲。

月まで届くロケットのような勢いだった前曲からは少し落ち着き、ピーナッツくん/兄ぽこの現在地、リアルな今の心境が歌われます。

「知り合いとかマジいらない

僕にはマジいらない

友達を作りたいよ ほんとのこと話したいよ」

という心からの叫びが哀愁を感じさせます。

ペットボトルロケットに乗って宇宙へ飛び出し、星々の中を進んで行くピーナッツくん、そして兄ぽこ。

キラキラと輝く星は一体何を意味しているのでしょうか。

友達?

それとも「きみ」でしょうか?

答えはハッキリとはわかりませんが、悩みながらも進み続ける若者の等身大の想いが胸を打ちます。

13.DR_0000_0212.wav

兄ぽこのボイスメモ。

兄ぽこファンへのボーナストラック…というより、アルバム制作をしていく中で生まれたリアルな"素材"なのでしょう。

ウォーキング中なのか、何度か深い息をつく兄ぽこ。

疲れを見せながらも、彼の足を進める音は止まることがありません。

今後のさらなる飛躍を期待させてくれるトラックです。

▼他の方の記事ですが、ボイスメモについて興味深い考察をされています。こちらもぜひ。

総評

今作が「False Memory Syndrome」や「Tele倶楽部」と明らかに違うのは、ピーナッツくんと兄ぽこの境界が薄れているような曲が多いということです。

ピーナッツくんと兄ぽこが融合しつつあるという考え方も出来ます。

私が思うに、これまでのピーナッツくんがいなくなってしまったのではなく、兄ぽことより深く結びついた新しいピーナッツくんが生まれる(respawnする)過程にあるのかもしれません。

アルバム全体のストーリーの流れとしては、Roomrunner~KFCではピーナッツくんの日常が描かれ、PEEPEE以降は兄ぽこの心象風景が少しずつ前に出てきます。

respawn~Youngpixarで語られるクリエイター/アーティストとしての悩みを経て、Petbottlerocketで前向きな想いが高く「打ち上げられ」るのです。

また、Roomrunnerの「朝」から昼間の日常が過ぎて次第に夜になっていき、アルバム終盤にかけてまた朝が来る、というような時間の流れを感じることもできます。

内面の悩みや葛藤を吐露するような曲が多く、ピーナッツくん/兄ぽこの存在がよりリアルに浮き出てくるような印象を受けます。

ピーナッツくんが「False Memory Syndrome」と「Tele倶楽部」で示した「存在証明」や「尖り」とは少し毛色が違います。

心の内側の素の部分が見えるという点では、一種の歩み寄りにも似たものを感じさせるアルバムです。

しかし、その「歩み寄りに見えるもの」は決してこちら側への譲歩ではなく、アーティストとして成長していく中で自然と足が向いた道にほかなりません。

アルバムを出す度に進化し、今作でまた1段階進んだ感のあるピーナッツくん。

次はどんな輝きを私たちに見せてくれるのでしょうか。

追記:Walk Through The Starsがビルボードチャートウィークリー4位にランクインしていたようです。

#ぽんぽこ24 「POSUKE」企画から考える、エンタメ成立の難しさ

お久しぶりです。

前回の記事からもう2ヶ月…。

時の流れは早いですね。

さる5/7~5/8、「ぽんぽこ24 Vol.6」が開催されました。

「フューチャー」をテーマに、今回も豪華ゲストを迎えつつ、ぽこピー史上初の試みとなるスタジオからの生放送が行われました。

企画は大成功のうちに終了し、筆者も(徹夜と出勤でヘロヘロになりつつ)とても楽しむことが出来ました。

今回のぽんぽこ24でも趣向を凝らした様々な企画が準備されていたのですが、その中でも個人的に興味深かったのが「POSUKE」という企画でした。

企画の面白さ以外にも色々と考えさせられることがあり、この記事を書くことにしました。

「POSUKE」とは?

この「POSUKE」という企画は、任天堂製のゲームソフト「スーパーマリオメーカー2」で作られたコースに参加者たちが挑戦し、各々がクリアを目指すというエンタメ番組です。

TBS系列で放送されているスポーツエンタメ番組「SASUKE」のパロディ企画でもあります。

ぽこピーにしては珍しいゲーム系の企画で、チャンネル登録者数300万人超えのゲーム実況者「ポッキー」氏などが参加する事でも注目されていました。

課題となるコース制作の監修は、マリオメーカーシリーズを6000時間以上プレイし、世界最難関とも言われるコース「Daphne's finale」を投稿した「solea」氏が務めました。

参加者たちにはそれぞれ1週間の練習期間が与えられ、事前に準備しつつ本番に臨んだわけですが、ここで思わぬ事態が発生します。

コースが難しすぎて脱落者が続出したのです。

トップバッターの「鬼灯わらべ」さんは、スタート直後にミスをしてしまい悔しさで号泣。

急遽再走を含めた2回勝負にルールが変更されましたが、またもやスタート直後にドボン。

▲鬼灯わらべさんは本来は実力のある人です

「葉加瀬冬雪」さんと「ポッキー」さんも苦手なポイントでミスをしてしまい、どちらもゴール出来ず。

▲何故か画面共有が上手くいかず画面直撮りのポッキーさん。黎明期のニコニコ動画??

「のばまん」氏はクリア直前まで進みましたが、こちらも惜しくもクリアならず。

事前準備があったとはいえ、本番にかかるプレッシャーは別。

しかも2万人以上の視聴者の目線に晒されていたわけですから、参加者の緊張は推して知るべしでしょう。

雲行きが次第に怪しくなり、コメント欄の視聴者も諦めムードが濃くなってきた頃、ついにラストの挑戦者、ホロスターズ所属「影山シエン」さんに順番が回ってきます。

企画者であるぽこピー2人や解説に駆けつけたsoleaさん、そして視聴者の全てが「クリアしてくれ…!」と祈る中、シエンさんは何度も危険な状態になりながらも、2走目でついにコースクリアします。

ハラハラして手に汗握りつつ見ていた私も、シエンさんがゴールした時は思わず「すげえ!」と声を出してしまいました。

それまでの挑戦者が全て脱落し「クリアは無理なのでは」という雰囲気が漂っていた中で、最後の挑戦者がギリギリでクリアする展開は、エンタメとしてまさに理想的。

後から振り返るとむしろ出来すぎとも思えるほどでした。

シエンさんの超ファインプレー

シエンさんのコースクリアは、単にクリアしたというだけでなく、POSUKEという企画全体を救う超ファインプレーでもありました。

もし誰もコースクリア出来なければ、「まぁ…難しいからしょうがないよね…」という、何とも残念な空気が参加者と視聴者の間に広がってしまったことでしょう。

企画者であるぽこピーの2人もダメージを受けたはずです。

また、(本人も危惧していましたが)コース製作者であるsolea氏にも「難易度が高すぎるんだよ!」というクレームが寄せられていたかもしれません。

POSUKEは今回のぽんぽこ24でもかなり前半の企画だったので、ここで躓くと後の企画に尾を引いてしまっていた可能性もあります。

まさしく「エンターテイメントの危機」でした。

このように、シエンさんのファインプレーは色々なものを救ったのです。

今回のぽんぽこ24において、非常に重要なポイントだったと言えます。

しかし。

私はこの企画が終わった時、あるVtuberの事を思い出していました。

高難易度のゲーム…。

おいおい、誰かを忘れてるんじゃないか?と。

This is コモラ

そう、ぽこピー界隈で「高難易度ゲーム」と言えばコモラさん以外にいません。

(誰?と思われた人はこちらの記事も参照してください。)

ぽこピーの2人もそれは理解していたようで、POSUKE企画とは別の枠でコモラさんを呼び、同じコースをプレイするように依頼していました。

コモラさんは朝のフリー枠に颯爽と現れると、いつもの如くイキり散らしながらコースをプレイ。

▲コモラさん登場は2:19:20頃から

ぽんぽこさんと雑談を交わす余裕を見せながら最終ステージまで辿り着き、一発勝負でクリアしてみせました。

アクロバティックなショートカットを連発し、最後にはコースの欠陥ポイントを指摘することさえしたのです。

ぽんぽこさんの「10回中何回クリアできますか?」という質問には「10回中9回」。

ピーナッツくんに「緊張してるじゃん」と言われると「緊張してるよ。だって10回に1回はミスるから(笑)」。

か、かっけぇ…!!

まさにリアルなろう系…!

連載でこんなキャラ出てきたらコメ欄で叩かれるぞ…!

コモラさんの圧倒的なゲームスキルとイキりをこれでもかと見せつけられた一幕でした。

しかし、私は感動しつつもなんとなくもどかしい気持ちを抱えていました。

「コモラさんがPOSUKEに出ていれば、彼のスキルをたくさんの人に見てもらえたのに…」

と。

私はコモラさんのファン(所謂"コモラー")なので、推しであるコモラさんがたくさんの人の快哉を浴びる場面をどうしても妄想してしまうわけです。

あのコースの難易度の高さが最も強調されていたタイミングでコモラさんがクリアしていたら、彼のファンがもっと増えたのではないか、と思ってしまったのです。

しかし、もう少し落ち着いてからさらに考えていくと、そんなに物事は単純ではないという事に気が付きました。

何をやったか、誰がやったか

コモラさんは今回の企画へ向けて練習する中で、このような発言をしていました。

「このメンツにね、コモラさん混じってしまったらね…」

「逆にね、僕が企画に呼ばれて、あっさり一発目にクリアしても盛り下がるからね。こいつぽこピーの身内やろみたいな。」

▲練習動画で語るコモラさん

そう。

コモラさんは分かっていたのです。

POSUKEという企画がエンタメとして成立するには、「ゲームスキル」と「知名度」の両方が必要だということを…。

POSUKEに参加していた配信者さん達はファンが多い人ばかりでした。

チャンネル登録者で見ると、ポッキーさんが最多の322万人。

1番少ない鬼灯わらべさんでも15.1万人と、全員が10万単位のファンを抱えています。

対してコモラさんは1.73万人。

私は数字が全てではないと思っていますが、やはり知名度で見ればコモラさんはまだまだ発展途上です。

「何をやったかより、誰がやったか」という有名な言葉があります。

芸能人などでもそうですが、「ファン」という存在は「推しの姿を見るために」ライブや映画・番組を見る傾向が強いように思います。

声優や俳優の場合、推しが演じるキャラに感情移入する人も多いでしょう。

POSUKE視聴者の中には、参加者さん目当てで配信を見に来ているファンも多く、その中に知らないコモラさんがいても、感情移入や応援をするのは難しかったでしょう。

また、コモラさんは"イキり"が持ち味のキャラでもあるので、初見の視聴者が多いと厳しかったかもしれません。

ファンとしては悔しい気持ちもありますが、コモラさんにとってアウェーな環境だったと考えると、致し方無いのかなと思います。

ぽこピーもその点を予想していたからこそ、緩い空気が流れる朝の枠にコモラさんをキャスティングしたのでしょう。

知名度と実力、そしてキャラクター性まで考え、(生配信なので)タイムキープもしなければならない…。

シエンさんのファインプレーの件も含め、エンタメを成立させるのは難しいものなんだなぁ…と改めて実感しました。

月見草よりど根性野菜

今回の企画でもう1つ気付いた点は、高難易度ゲームの世界のディープさです。

soleaさん監修のマリオメーカー2のコースは、我々一般のゲームユーザにしてみれば「難しすぎる」ものでしたが、コモラさんのような高難易度ゲーム常連のコアユーザにとっては「簡単」なのです。(配信での発言より)

あくまで私見ですが、ゲーム実況動画で人気を集めるゲームは基本的にプレイ人口が多いゲームであり、その理由は「多くの人が共感できる」からだと推測しています。(例外ももちろんあります)

「このクリア方法、自分も試してみよう!」

「そのミス、わかる。俺もよく引っかかったよ」

というように、共感出来たり自分で再現できるから盛り上がれるのだと思います。

バグ動画も人気ですが、GTAシリーズやゼルダの伝説Botw、ポケモンのように、元々のプレイ人口が多いゲームがネタになるケースが多いと感じます。

RTAやスピードラン系の競技性があるジャンルも一定の人気がありますが、一般層にとっては再現性が低く共感が難しいため、メインストリームまで浮上することはなかなかないようです。

まして「Jump King」「LOST EGG」「Celeste」のB面やC面のような「初めから鬼畜ゲー・死にゲーが好きな人をターゲットとしたゲーム」などは尚更でしょう。

プロ野球選手の野村克也氏は、高い実力を持ちながら人気選手の陰に隠れていた自分のことを指して、

「長嶋や王(人気選手)はひまわり。私は日本海の海辺に咲く月見草」

と詩的に例えました。

高いゲームスキルを持ちつつ、ゲーム実況のメインストリームからはやや外れ、コアな高難易度ゲームをプレイするコモラさんのような配信者達にも、この比喩は当てはまるかもしれません。

しかし、私はコモラさんには別の印象も抱いています。

コモラさんのゲームスキルの高さは動画を見てもらえばわかりますが、彼の本当の凄さは忍耐力と諦めずに挑戦する力、つまりメンタル面にあります。

以前の記事でも紹介した通り、難易度が高すぎてクソゲーに片足を突っ込んでいるようなゲームでも諦めずにプレイする胆力には驚くべきものがあります。

また高難易度ゲームに対するアンテナも広く、有名配信者が見つけてブームになる前に手をつけている事も多いです。

▲Jump Kingの実況動画。コモラさんは日本で話題になるより先に一足早くプレイしていた

先程、コモラさんのイキりを「なろう系」のようだと表現しましたが、なろう系と言っても「俺、なんかやっちゃいました?」というタイプではありません。

練習動画を見てもわかるように、コモラさんはひたすら死にまくりながらコースを攻略していました。

▲練度が上がっても、やはり凡ミスはある。これが死にゲーの醍醐味

元々持っているスキルに加え、何度も練習して努力するからこそ、イキれるほどの実力を手に入れることが出来たのです。

このことを考えると、私はコモラさんは月見草というよりは「ど根性野菜」のようだと思っています。

ど根性野菜 - Wikipedia

ニッチなジャンルに根を張り、コンクリートのように厚い難関を突破してクリアという実を結ぶコモラさん。

これからも視聴者に、コモラさん流のエンタメとイキりを存分に見せつけてもらいたいものです。

"レンタルぽこピー"ウィークで見えた「Vtuberの原風景」

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2022年3月。

私は少々疲弊していました。

不穏な世界情勢。

迫り来る花粉症。

Vtuberの始祖、「キズナアイ」の無期限活動休止。

大物Vtuberのスキャンダルと解雇、そして暴露。

Twitterトレンドに「Vtuber」が上がる時はだいたい炎上関連。

自分にとって娯楽や趣味であるはずのVtuberに影が差している。

そう思う時もありました。

さらに追い打ちをかけるように、筆者の最推しV「甲賀流忍者ぽんぽこ」さんの編集用パソコンが壊れてしまい、動画投稿が出来なくなるという悲劇が起こります。

もう終わりだよこの世界。

しかし、ぽんぽこさんとピーナッツくんはこの危機的状況をチャンスに変えました。

新しいパソコンが届くまでの1週間、コラボの誘いに乗りまくってその数を競うという企画、「レンタルぽこピー」を立ち上げたのです。

正直な話、筆者は当初「確かに面白そうだけどコレジャナイんだよなぁ」と思っていました。

私はぽこピーの2人が楽しく喋っている動画が好きなのであって、他のVにはそんなに興味が無かったのです。

しかし、コラボ動画が積み重なるにつれ、その感情は薄れていくことになりました。

尋常じゃない「フッ軽」さ

まず私を驚かせたのは、ぽこピー2人のフットワークの軽さです。

ぽんぽこさんは以前から知らぬ間に面白いコラボを取り付けてくることに定評があり、「ぽこピーの渉外担当」とも言える立ち位置でした。

しかし、今回の企画でピーナッツくんの"フッ軽"ぶりも相当なものであると気付かされました。

ピーナッツくんはコミュ障キャラとしても知られており、企画当初は

「ちゃんとコラボの誘いに乗れるのか?」

「ぽんぽこに惨敗してしまうのでは……」

という危惧の声もファンからは上がっていました。

しかし、蓋を開けてみればぽんぽことピーナッツくんのコラボ数は非常に僅差となっており、心配は全くの杞憂であったことがわかります。

7日間の企画の中で、2人がコラボした動画は実に40本を超えており、それぞれの撮影時間を考えると相当にハードなスケジュールだったのではないでしょうか?

レンタルぽこピー - YouTube

そんな中でも疲れを見せずに元気に振る舞うぽこピーのバイタリティの高さには驚かされます。

コラボ動画の多様さ

次に感心したのは、コラボしたVtuberさん達の企画の多種多様さです。

私が今回のレンタルぽこピー企画を気に入るきっかけとなった動画をご紹介しましょう。

「アメひとつ」さんとピーナッツくんのコラボである「カニvsヤドカリ!」配信です。

▲2人ともペットを「キモッ!」と思う瞬間があるそうです。

なんだそりゃ?と思う人が多いと思いますが、本当に「なんだそりゃ?」です。

ピーナッツくんはサワガニをペットとして飼っているのですが、アメひとつさんはヤドカリをペットとして可愛がっているので、どちらが可愛いか甲殻類トークで激論を交わす、という内容の配信です。

わからん!(千鳥ノブ)

しかし、これが不思議と面白いのです。

アメひとつさんのテンポの良い上手なトーク回しによってピーナッツくんも楽しそうにしていましたし、2人が「キモカワ」で意気投合して視聴者が置き去りになる様子は、まさにヤムチャ視点でした。

企画は好評のうちに終わり、アメひとつさんのチャンネル登録者数がコラボ前の数倍に激増するなど、埋もれていたVtuberさんを発掘する機会としても有意義なコラボとなりました。

ぽんぽこさんと「2次元カメラマンVtuber」のKAZUMAさんのコラボでは、3DアバターをVRchat内のブースで撮影し、現実の写真と同じように仕上げるという、なんとも近未来的な企画が行われました。

▲オシャレすぎるKAZUMAさんの服にも注目。

今後「メタバース」やVR技術がさらに活用されるようになれば、当然仮想空間内での写真撮影やモデルの仕事も需要が出てくると考えられます。

いつか到来するであろうバーチャルな新世紀に思いを馳せる良い機会となる動画でした。

ピーナッツくんが「紫桃あのん」さんとコラボした動画では、「遠隔操作クッキング」が行われました。

▲無駄にイチャイチャしててこっちが恥ずかしくなってきます。

遠隔操作でスーパーの食材を買ってきてもらい、ちゃんとした料理が作れるのか検証する企画です。

ピーナッツくんとあのんさんは以前に「バーチャルバチェラー」という企画で面識があり、"フッた元カノ"という設定の元に繰り広げられるむず痒いトークはなかなか味わい深く、私のお気に入りの動画の1つとなりました。

他にも沢山のオススメ動画があります。

ガチ恋さんが出演する寸劇コラボ落ち着いたトークが楽しめるラジオコラボテレビ出演・MV出演コラボピーナッツくんがとち狂った魔法少女たちに翻弄された挙句衝撃の結末を迎える懐古厨歓喜のちあめあコラボなどなど、挙げ出せばキリがありません。

▲普段は出てこないぽんぽこさんの一面が見られます。

▲こちらもクリエイターとしてのピーナッツくんのスタンスが見えるラジオ。

▲退廃的な曲調が印象的な楽曲コラボ。

▲安心してください。2人は頭がおかしいんです。

ぽんぽこさんは持ち前のコミュ強ぶりを活かしたVRchat内での「オンライン・オフコラボ」(意味不明だけどこう形容するしかない)の動画が多い傾向がありました。

一方のピーナッツくんは、持ち前の女たらし属性(!?)を活かした女の子とのコラボや、ラップコラボを多くこなしていました。

企画内容にもそれぞれの持ち味が発揮されており、その違いも楽しむことが出来ました。

また登録者帯に関係なくコラボに応じており、数字や経歴に左右されない2人の良さが出ていると思いました。

Vtuberの原風景

今回の「ぽこピーレンタル」を通じて、私は2018年のVtuberに初めて触れた頃を思い出しました。

企業・個人問わず次々に出てくる得体の知れないVtuberたちを見て、新しい文化の萌芽を感じつつワクワクしていたのを覚えています。

まだ色んな人が活動方針を模索していた時期で、当時は非常に荒削りなVtuberや企画が沢山ありました。

ぽこピーもその中の1つでした。

コミケで撮影したVtuberコスプレの写真をLive2Dモデルの横に並べて、勝手に「コラボ」と言い張っていた事もありました。

今回のぽこピーレンタルコラボでも荒削りなものはある程度ありました。

前述したような「勝手にコラボ」系の動画もありましたし、配信でのグダリも見られました。

このような"粗さ"や"ミス"は減らしていくべきものですが、一方でそれを恐れてチャレンジしなければクリエイターは成長できません

一般に物事は洗練されるとクリエイティビティを失うと言われています。

安定を求めると冒険しなくなるからです。

だからこそ、業界のトップランナーたちは挑戦を忘れません

挑戦と失敗こそクリエイターの根幹をなすものなのです

今の自分は洗練されたものに触れすぎて、ちょっとの綻びさえも許容できなくなっていないだろうか?と改めて自問する機会になりました。

Vtuberの誕生から4年以上が経過し、配信者やファンの裾野が広がると共に全体的に停滞するような空気を感じていましたが、根底の部分では初期の頃と何も変わっていない、と改めて思いました。

私は初期から一貫して「Vtuberアバター文化の1つであり、隠れていた才能が表に出てくるためのものだ」というスタンスでしたが、今回の企画はその実感を強めてくれました。

Vtuberは「時期尚早のカルチャー」だ - 頭の中の小さな引き出し

▲こちらの記事も参照。

そこにあったのは、私がVtuberを追い始めた時に見たものと変わらない、まさに原風景でした。

ちょっと普通では思いつかないような、または思いついてもやらないような企画にチャレンジする人がいます。

まだ全然世間に見つかっていないけど、実はすごい事をやっている、そんな人がいます。

こんな人達がアバターと共にネットの海に潜伏しているからこそVtuberは面白いのです。

上辺の数字や一部の派手な部分だけを見て、「絵がゲームやってるだけじゃん」だの「Vtuberは死んだ」だのと言う人がいますが、それはやはり勿体ない見方だと思います。

Vtuberの世界はまだまだ続いている。

これからも色んな面白い人達が出てくる。

そう期待を抱く機会を与えてくれたぽこピーと、コラボしてくれた全てのVtuberさん達に感謝したいです。

ガチ恋ぽんぽこ3年史 ~"ガチ恋さん''はいかにして人気者となったか~

あ~う~❤ひひ~ん❤

どうも、最近はなぜか筆がノッている筆者でs…あぁ!ブラウザバックしないで!

え?

冒頭に変な馬がいた?

な、なんて失礼な……。

これは「ぽんぽこちゃんねる」の人気者、ガチ恋ぽんぽこ」さんの挨拶です。

どう見ても馬?

やっぱりそうですよね…。(冷静)

気を取り直して。

今回の記事では「ガチ恋ぽんぽこ」についての話題を、これまで辿ってきた歴史を中心に取り上げたいと思います。

ガチ恋さんに脳を乗っ取られないように、適度に休息を置いて読んでください。

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ガチ恋ぽんぽことは?

まず、ガチ恋ぽんぽこ」とは何者なのでしょうか。

彼女が初登場したのは2018年8月30日、ぽんぽこちゃんねるで行われた「NEW PONPOKO 発表会!!!」という生放送でした。

▲登場は5:45~。

ガチ恋ぽんぽこの特徴として、

  • 大きくつぶらな瞳
  • たれ目気味のたぬき顔
  • 美脚を強調したファッション
  • 媚びるような萌え(?)声
  • 舌足らずなあざとい喋り方

という要素があります。

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▲最新バージョンのガチ恋ぽんぽこさん。美脚が素晴らしい。

甲賀流忍者ぽんぽこ」が忍術によって変化した姿であり、消費するチャクラ(エネルギー)が多いために長時間の行動は出来ない、という謎にロマンを感じる設定もあったりします。 (実際はぽんぽこが恥ずかしがって精神力が持たないからです。)

動画で登場する際にはフリー音源の楽曲「星屑サラウンド」が流れるのがお約束で、実質的な彼女のテーマソングとなっています。

ちなみに「ガチ恋ぽんぽこ」という名称は当初から決まっていた訳ではなく、視聴者に対して「ガチ恋して~!」と頻繁に要求することから付いた通称でした。

後に本人が動画の中でガチ恋ぽんぽこだ~お❤」と名乗り始めたことで公式となりました。

最近はガチ恋さん」という敬称付きの呼び方も定着しています。

また、なぜかピーナッツくんの事を「大魔獣ちゃん」と呼びます。(理由は完全に不明。)

ガチ恋ぽんぽこの歴史

今でこそ人気者となっているガチ恋ぽんぽこですが、彼女のキャリアは決して順風満帆とは言えないものでした。

甲賀流忍者ぽんぽこ」としての活動初期に使われていた2Dモデルは、視聴者から「色合いが地味」「あんまり可愛くない」「伸びた時が怖い」という不評をたびたび受けていました。

f:id:aidnoyatsudayo11:20211223014136j:plain ▲「伸びた」状態のぽんぽこ。この動きのせいで「化け狸」と呼ばれたりしていました。

当時の2018年はまさにVtuber群雄割拠の時代」であり、個人企業問わずビジュアルの優れた新人が続々とデビューしていました。

そんな中で地味なぽんぽこの初期モデルを使い続ければ、「いずれは流行に置いていかれるのでは無いか?」と危惧されていました。

そこで、ぽんぽことその実兄である兄ぽこは新たな姿を実装することに決めます。

それが「ガチ恋ぽんぽこ(当時は特定の名前なし)」だったのです。

「NEW PONPOKO」と銘打たれて登場した新モデルでしたが、視聴者からの評価は賛否両論でした。

当時のコメント欄からいくつか引用しましょう。

「もどして」

「母親が萌声出し始めた」

「旧モデルの良さを逆に伝える高等テクニック」

「可愛かったよ」

「笑顔が滅茶苦茶かわいい」

トータルで見ると「否」の割合の方がやや多く、「賛」の中にも「旧モデルと使い分ければ」「慣れれば違和感なくなるかも」という注釈付きのようなコメントが多くありました。

この反応はぽんぽこと兄ぽこにとっては想定外のものだったようです。

「正統派の可愛い女の子」を目指したにもかかわらず、「独特な鳴き声を上げて視聴者やピーナッツくんに絡みまくるイロモノ」が錬金されてしまったのです。

エドワード・エルリックが見たら勘の良さを発揮してブチ切れそうです。

筆者の個人的な分析としては、大きな瞳やアヒル口、舌っ足らずな喋り方など、世間で「可愛い」とされる要素を詰め込んだ結果、一種の「不気味の谷」のような領域にハマりこんでしまったのだと考えています。

f:id:aidnoyatsudayo11:20211223014411j:plain ▲明確な説明は出来ないが、なぜか見ていると不安になる2Dガチ恋ぽんぽこ。

以降この新モデルは「余所行き」として扱われ、案件動画など「媚び」が必要な時に召喚されるようになりました。

ぽんぽこ24vol.2にも登場していましたが、使い所の難しさゆえに彼女の登場頻度は全体的に控えめになり、ガチ恋ぽんぽこは長い雌伏の時を迎えることになります。

初登場からおよそ1年後の2019年7月18日、「今夜、君も、ガチ恋。」と題した生放送の中で、ついにガチ恋ぽんぽこは3Dモデル化を果たします。

▲登場は7:45~。

製作者は「さえきやひろ」さんで、2Dモデルの特徴を活かしつつも可愛さを増やした良モデルです。

f:id:aidnoyatsudayo11:20211223014749j:plain ▲初期モデルから一貫して可愛いガチ恋ぽんぽこの笑顔。

この2日後に投稿された「萌え声MAXEND 激辛春雨ENDで汚い声を出したら即終了!」という動画は視聴者から好評を博し、再生数もよく伸びました。

▲安定して6桁再生を叩き出す人気シリーズとなった。

それ以前にも「汚い声を出したら即終了」系の動画は投稿されていましたが、ガチ恋ぽんぽこのビジュアルがより可愛くなったことで視聴者に受け入れられやすくなったのでしょう。

これ以降「萌え声Vtuberが○○しました」という企画がシリーズ化し、ガチ恋ぽんぽこは浮上のきっかけを掴みます。

筆者がガチ恋シリーズ」と(勝手に)呼んでいるこの企画の中で、特に好きな動画をご紹介しましょう。

▲注意!虫が出てきます!苦手な人はくれぐれも気をつけて!

この動画は、なぜか昆虫食にハマってしまったガチ恋ぽんぽこが「萌え声Vtuber」にあるまじき言動をし、ゲストのピーナッツくんがそれにドン引きしながら突っ込む、という構成になっています。

2人の掛け合いやテンションの差の面白さ、そしてガチ恋ぽんぽこのビジュアルと昆虫食のギャップがクセになる動画です。

この面白さに魅了された視聴者は私の他にも沢山いたようです。

毎日投稿される動画の中でガチ恋ぽんぽこが出ているものだけ再生数が他より多いという現象が発生し、「ぽんぽこちゃんねるのキラーコンテンツと呼ばれるまでになりました。

チャクラ不足のために登場頻度は1ヶ月に1回程度でしたが、投稿からしばらく経つと「そろそろガチ恋ぽんぽこが見たいなぁ」と"ガチ恋不足"を訴えるファンも表れるなど、すっかり人気が定着しました。

"可愛い女の子"という当初の構想とかけ離れた路線ではありますが、ガチ恋ぽんぽこはみんなの人気者になることが出来たのです。

まるで「正統派アイドルを目指して上京した女の子がバラドルとしてブレイクした」ような構図です。

バラエティタレント - Wikipedia

"バラドル"としてぽんぽこちゃんねる内で猛威を奮っていたガチ恋ぽんぽこでしたが、2020年10月2日に開かれた日本最大級のアイドル音楽イベントTOKYO IDOL FESTIVAL 2020 オンライン」に出演するという驚きの事態が発生しました。

このキャスティングは今に至るまでぽこピー界の大きな謎であり、ファンの間でも賛否両論でしたが、何はともあれガチ恋ぽんぽこは"バーチャルアイドル"としてステージに立つことができました。

なんとあの指原莉乃さんとも共演することが出来たのです。

2年前に「もどして」等と言われていた子と同一人物とはとても思えません。

私はガチ恋ぽんぽこがデビューした時から応援していたので感無量の気持ちでした。(後方腕組み古参面)

なお、ステージでのパフォーマンス内容についてはぽんぽこ自身が「2020年最大の黒歴史と語っているので……お察しください。

その後は2021年8月29日に開催された「TUBEOUT!FES ~2021 SUMMER~」に出演して歌を披露しました。

さらに9月16日には、TOKYO IDOL FESTIVAL 2021」内で開かれる「バーチャルTIF」カウントダウン特番のMCを務めるなど、様々なキャリアを積んでいきました。 (TIFのガチ恋さん推しはなんなんだ…?)

▲MCなのに他のアイドルを差し置いてなぜか1番大きくサムネに映るガチ恋さん。

さらに、ぽんぽこ本人によって

ガチ恋ぽんぽこは別の人格」

「秘めたるガチ恋さんが出てくる」

ガチ恋さんに脳を支配される時がある」

というサイコな設定が後付けされ始め、口調も舌っ足らずを通り越して判読が難しいほどにデフォルメされるなど、ガチ恋ぽんぽこのキャラクターはさらに濃くなっていきました。

2021年5月13日に投稿された動画で、ガチ恋さんの3Dモデルはさらにブラッシュアップされました。

▲最新版のガチ恋さん。これもうアイドルだろ…。

本人は「整形」と言っていますが、着ているパーカーの色が変わったり、女子力の高いネイルが追加されたりと、もはや"正統派萌え系Vtuber"と言っても過言ではない見た目になったのです。 (※見た目だけ)

コメント欄でも「毎週ガチ恋さんが見たい」「可愛すぎて見惚れちゃった」と絶賛の嵐。

初登場時が嘘のようです。

まあ中身は何も変わっていないので言動はこれまで通りですが、見た目が可愛くなったことでさらにギャップが強調されるようになりました。

ギャップはあればあるほど面白いと日本国憲法にも書かれています。

今後もガチ恋さんの快進撃は続くでしょう。

風刺としてのガチ恋ぽんぽこ

ガチ恋ぽんぽこの特徴的な見た目や言動を、「萌え系Vtuberが持て囃される現在のVtuber業界への風刺」と捉える考え方が一部に存在します。

「可愛い声」「可愛い見た目」にばかり目が向けられがちで、所謂「媚びた」キャラの人気ばかり出る現象への一種のアンチテーゼになっているというのです。

ガチ恋ぽんぽこはガチ恋して~❤」とよく言います。

Vtuberやアイドル業界ではガチ恋」=「厄介なファン」と認識される向きが大半であり、多くの配信者が対応に悩む中で、むしろガチ恋を積極的に推奨する」ガチ恋ぽんぽこは少し異質な存在です。

また、ガチ恋を要求する割には、虫を食べたり激辛に挑戦したりと、こちらを"ガチ恋させる"気はあまりないようにも思えます。

媚びているのか媚びていないのかよく分からないのです。

ガチ恋さんは恋愛にもあけすけだったりします。

一般的に女性アイドルやVtuberは男の影が少しでもあると炎上してしまう傾向にありますが、ガチ恋さんはなんとバツ1です。

▲今やアイキャッチでお馴染みとなった「どんぱっぽ!(意味不明)」の元ネタです。

マッチングアプリを使ったと公言したこともありますが、(なぜか)全く炎上していません。

この辺りの恐れ知らずの行動も、彼女を異質な存在としている要因でしょう。

以上のことから、ガチ恋ぽんぽこは「大きな瞳や萌え声」という"王道"の一面を持ちながら、「奇抜な言動や尖った企画」という"異端"の面も併せ持つ、とても特異なキャラクターだということがわかります。

しかし、ガチ恋ぽんぽこの見た目は「正統派」を目指してデザインされており、前述したような量産型へのアンチテーゼとしての意図はありません。

また、特徴的な言動は変化前のぽんぽこの「萌え」に対するズレた見方が反映されたものです。

「こうすれば萌え系になるだろう」というぽんぽこの意図が空回りしたものであり、本人には風刺や揶揄する意図は全くないと思われます。

ですから、このような解釈は完全なる非公式であり、視聴者側の勝手な言い分であるということをここに銘記させていただきます。

Vtuber界には「彼女より友達にしたい枠」とも言えるものが存在しています。

ちなみにこれは筆者が適当に言語化したものであり、「おもしれー女枠」など表現方法は様々です。

おもしれー女とは (オモシレーオンナとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

これは、見た目よりキャラの個性や面白さ、企画力などのバラエティ性が特徴となっている女性Vtuberのことで、月ノ美兎さん鈴鹿詩子さんなどが代表的な存在として挙げられるでしょう。

もちろん、彼女達が可愛くない、などと言うつもりは毛頭ありません。

十分な外見的魅力を持っていながらも、その印象を薄れさせてしまうほどの強烈な個性が彼女達の売りなのです。

先程例として挙げた「バラドル」の概念と近いかもしれません。

しかし、このような女性Vが活動を続ける中で次第に可愛い部分が目立つようになっていき、「昔は友達としか思っていなかった幼馴染が…いや違うな…フフ…俺は最初からアイツのことが…」という状態になることがあります。

これはガチ恋さんにも当てはまります。

最初は可愛くないと言われていた女の子がどんどん垢抜けて可愛くなっていき、世間からの評価も変わる…という構図を、今のガチ恋さんは体現しています。

ですから、風刺などと言ってひねくれた見方をするのではなく、「少し変わった女の子が成長していくシンデレラストーリー」として素直に楽しむことこそ、"ガチ恋ぽんぽこ"というコンテンツへの正しい向き合い方なのではないか?と私は思います。

ガチ恋

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なんだか西尾維新の新作のような副見出しになってしまいましたが、「がちこいがたり」ではなく「がちこいご」です。

2つ前の項目でも書いたように、ガチ恋ぽんぽこは舌っ足らずな口調で喋ります。

これは極端に誇張されたぶりっ子口調であり、最近では誇張されすぎて赤ちゃんみたいになっています。

まだ口で喋っている分にはマシですが、Twitterで口語を書き出されると解読する難易度が一気に上がります。

例としてこちらのツイートを見てみましょう。

読めたでしょうか。

以下が正確な翻訳です。

あ~う~ひひ~ん

なんとなんなんと

12月21日~25日の5日間

ガチ恋weekはっじまっるよ??

アドベントガチ恋ねっ

ぽんぽこちゃんねるはあたしのもんよぉおおお

今日はチャクラ温存するから更新なし!ごめんね?

"ガチ恋week"というとんでもないパワーワードはこの際一旦無視します。

言葉の変換パターンとしては、かの手塚治虫氏の名作漫画「ブラックジャック」に出てくるピノコの口調に近いです。(風評被害)

しかし、「あたし→あちゃちゃ」などイレギュラーな変換があったり、ガチ恋さん独特の「ノリ」で文章が構成されていたりと、全てのパターンを解読するのはほぼ不可能です。

「にゃん」「がお~」など、動物の鳴き声がランダムで出てくることもあります。

そして、この記事冒頭でも出た「あ~う~ひひ~ん」

これは初期からガチ恋ぽんぽこが挨拶代わりに発する鳴き声(?)です。

まるで馬のようだとピーナッツくんから散々ツッコミが入っていますが、馬ではないようです。

しかしウマ娘ブームにはちゃっかり乗っかっていました。

▲先見の明があった…のか?

この鳴き声は、恐らく萌え声Vtuberを目指すにあたってどこかの配信者を参考にしたのでしょうが、原型からかけ離れすぎていて元ネタが分かりません。

分かったところで多分全く似ていないと思います。

圧が強すぎて畏怖すら覚えるガチ恋語ですが、触れているうちに段々とクセになってきます。

何よりもこれを毎回生み出しているぽんぽこが凄いです。

ガチ恋メディアミックス

ガチ恋さんはいつもの動画とは別に、他の媒体でも活躍しています。

まずはガチ恋さんのゲーム。

ガチ恋デイズ」という恋愛ゲームが存在しており、なんとこれはぽんぽこ本人が制作しています。

こちらの動画の概要欄からファイルをダウンロード出来ます。

▲なんとマルチエンディング採用!

また、ガチ恋さんはコミカライズもされています。

講談社でも活躍されている「北宮あみ」さんによって描かれた「恋ちてる?」という漫画が、2021年10月31日に開催されたKAI-YOU HYPER POP MARKETで限定頒布されました。

これは同人誌扱いではなく公式漫画であり、なんとガチ恋ぽんぽこ直筆の寄稿ページもあったそうです。

企画はまだ進行中ということで、次の展開からも目が離せません。

さらに初めてとなる公式グッズも制作されており、これは2021年12月24日から渋谷にて開催されるイベント「バーチャルスクランブル2」で発売されました。

こちらはイラストレーター・動画クリエイターの「可哀想に!」さんが協力しておられるようです。

追記:ガチ恋さんのオリジナル曲もあります。

「DON PA PPO」という曲で、2021年12月25日にMVが公開されました。

作詞・作曲は「かわみ」さん、MV制作は前述の「可哀想に!」さん、タイポグラフィ「earthonlywin」さん、そしてMIXは「星屑サラウンド」などを手がけた「龍崎一」さんです。

▲豪華コラボ!

ガチ恋ぽんぽこというコンテンツの集大成感がある、非常に素晴らしいMVですね。

まとめ

今回はガチ恋ぽんぽこの歴史と特色について書きました。

ガチ恋ぽんぽこは「甲賀流忍者ぽんぽこ」から派生したキャラクターでありながら、そのビジュアルや言動で異彩を放ち、「ガチ恋シリーズ」等の人気企画を抱えるぽんぽこちゃんねる屈指の売れっ子となっています。

チャクラ不足という縛りがあるために登場回数が制限されており、「レアキャラ」扱いになっているのも人気に拍車をかけているのかもしれません。

個性が強いので週に何度も出てくると胃もたれしますが、月に1度くらいの頻度だと逆にもっと見たくなってしまうのですから不思議なものです。

私も動画更新通知が来た時にガチ恋さんの動画だとテンションが上がります。

f:id:aidnoyatsudayo11:20211223022431j:plain ▲これだけ大きく出ても不快にならないガチ恋さん。だって実際可愛いもんね。

紆余曲折ありながらも、ファンのみんなに愛され、年を経るごとに飛躍していくガチ恋ぽんぽこ。

次はどんな「あ~う~❤」を見せてくれるのでしょうか。